第100話 遺跡
ソーニャさんは別の依頼を受けに行った。
「これが、Sランクの依頼です。」
ミスティさんが巻物を持ってくると、どさっと置いた。
「今あるSランクの依頼は、全部で4件ですね」
ミスティさんが巻物を広げてくれる。
「うーん……緊急性のあるものはないですね」
「ソラ様が魔王を討伐してくださったお陰ですよ」
困っている人がいる依頼があるなら優先して受けようと思ったんだけど、どれも調査系の依頼だった。
「うーん……じゃあ今日はこの遺跡調査で、明日はこっちの迷宮調査を受けましょうか」
「えっ……?」
なんか驚かれたんだけど、変なこと言ったかな?
「なんか悪いこと言いましたか?」
「いえ、もしかして……この依頼一日で終わらせる気ですか?」
「はい。場所も何があるかも大体わかりますし、確認に行くだけです。本来私だけなら一日で4つ終わらせられると思いますが、今日はエルーちゃんと一緒に行きますから、流石にね……」
ミスティさんはぽかんとしていた。
「本来はSランクの方々が何日もかけて達成する依頼なのですが……。だ、大聖女様を侮っておりました……。大変失礼いたしました」
「いいんです、いいんです。ただ効率厨なだけですから……」
後半は、いかにして効率よく稼げるか考えてたっけ。
「わ、私がいることでソラ様のお仕事の邪魔になるのでしたら……」
「いや、むしろ今回はエルーちゃんについてきてほしいな」
「えっ……?」
「この二つの調査依頼、ひとつはエルーちゃんに一人で達成してもらいます」
「「え、ええええっ!?」」
聖国の南には海岸がある。
その海を渡った先には南の国があるけど、今回用があるのは海の岩場にある洞窟だ。
「止まれ!ここから先は立ち入り禁止区域だ」
そう言われ、事前に渡された通行許可証を見せる。
「ん?許可証にはソラ様の名前が書いてあるが……」
「あ、ああ……ごめんなさい」
ウィッグを外すのを忘れていた。
ウィッグを外すと、見張りの衛兵さんはぎょっとした顔をした。
「ソ、ソラ様っ!?……失礼しました。中へどうぞ!」
洞窟の下に向かうと遺跡へと続く通路がある。
とはいえ魔物……いや眷属達も強いから、聖女以外誰も近づけなかったのだろう。
しばらく歩いていると、やがて斥候の小さな半魚人達が槍を担いでこちらに来る。
「ソラ様、下がってください!ここは私がっ!」
「ああ、多分敵じゃないよ」
「えっ……」
そう言うと眷属のマーマン達は僕に顔を寄せすりすりとしてきた。
「お、お知り合いなのですか?」
「まあ、そんなとこかな。主のもとへ案内してくれる?」
言葉は発せないようだけど、頷くと「ついてこい」とでも言うかのように歩き出した。
やがて見えてきた大部屋には水色に光る鉱石が光源となり照らす神秘的な空間があった。
その奥には水辺があり、人魚達が遊んでいる風景が見えた。
「ここは……」
水辺の中央にはいっそう青い光源が多くなる岩の島がぽつんとあり、そこには額に赤いコアをもつ、髪の長い美人な人魚がいた。
「あら?ソラじゃない!全然呼んでくれないと思ったら、わざわざ会いに来てくれたのね!」




