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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第997話 紺碧

「先日アップロードされた動画、もう億再生されているみたいですよ」

「は……?」


 マジですか……。


「ホントだ……。メイドさんってそんなに人気なんだね」

「いえ、どちらかというとソラ様が人気のようですよ」

「えっ、だってあの動画の焦点はメイドさんだし、僕の出番なんて質問しているところか、ドジシーンしかないじゃん……」

「最もリプレイの多い箇所がこちらです」

『濡れすぎちゃった……』


 なんで僕のドジシーンなんだよ……!

 そこだけ聞くと意味変わってくるでしょうに。


「それより、本日はアレでございますね」

「そうだね。うんとお洒落して、向かう準備をしないとね♪」




「――本日も紺碧会に御参加くださり、誠にありがとうございます」


 紺碧薔薇会(ブルーローズ)

 正式名称を『紺碧麗しき薔薇を愛でる会』。


 この集まりは主に貴族や商人がその身分などを忘れ共通の趣味を持つ娯楽を嗜む時間を共有する場、つまり前世でいうところの『倶楽部(クラブ)』の一種である。

 紺碧薔薇会はソフィア女王の代、つまり僕の二つ上の聖女学園の先輩であるエディス・ベレスフォード様が立ち上げた会員制の会であり、()()()な活動としては青色の花を愛し、語らいあうお茶会を毎月開いているという。


 もちろん「表向き」とは言ったが、実際にここは青色に囲まれた花畑で、ブルーローズやアサガオ、ツユクサなど沢山の青い花が育てられており、お茶会をしているのも事実だ。


 何故表向きの活動名目があるのかというと、会費を募るために募りやすくするためだ。

 まるで彼氏の家にお泊まりするのに「お友達の家に泊まる」と言って口裏を合わせるかのようなことをするのには理由がある。


「本日も『紺碧の刀姫』様の素晴らしさを共有いたしましょう」


 そう、紺碧薔薇会は『紺碧の刀姫』、つまり涼花さんのファンクラブなのだ。


「王宮のパーティーに御参加されたとお聞きしましたわ!」

「軍服姿に青い御髪、とても凛々しいものでしたわ……!」

「紛れ込んでいた魔族を制圧なされたとか。流石は歴代最強の親衛隊長です」

「私も一目見たかったですわ……!」


 彼女の人気は学園での人気に留まらず、こうして学園外でファンクラブがあるほどに発展した。


「話題は少し待って頂戴。本日は特別なゲストをお招きしているのよ」

「ゲスト……?」

「ごきげんよう、皆様」


 花畑の奥から姿を表したのは僕とエルーちゃん。


「ま、まさか……!?」

「大聖女様……!」

「それに、エルーシア様まで……!」

「ど、どうしてこちらに……?」

「ふふ、少し皆様に用事がございまして。無理を言ってエディス様にお願いしたのです」

「わ、私達を咎めないのですか?」

「咎める?何をですか?」

「そ、その……陰ながら推しているということに対して……」

「ふふ、涼花さんは素敵な女性ですから、皆様が囃し立ててしまうのも気持ちがわかりますもの」


 僕は同担拒否なんかではない。

 それに涼花さんが僕のこと愛してくれていることはもう知ってるから。


「どちらかというと私の方が心配でした。皆さんから見ると推している人の結婚相手など見たくないのでは?」

「あら、ソラ様。この会にそのような下賎な考えを持つ者はおりませんわ」

「では、本題に入る前に少し、皆様の涼花さんトークを聞かせてくださいますか?」




「この間の魔帝国の大会に出た時の映像、セインターで拝見いたしましたわ」

「あの魔帝陛下を撃ち破ったばかりではなく、その後の演説で魔族と人族の諍いを治めてしまうのですから、本当に素敵なお方ですわ」

「私、その時の姿絵を描きましたのよ!」

「私は詩集にしてみました」


 すごい、純粋な二次創作が出来上がっている……。

 しかし、なんというか妻が褒められているのを聞いているのはなんだか嬉しい。

 僕も涼花さんのこと大好きだし、定期的に参加しようかな……。


「それで、私、少し気になっておりますの……!」

「実は私も……!」

「?」

「お二人の馴れ初めは、どちらからでしょうか?」

「えっ?ええと……その……」

「涼花様の方から熱烈的に告白なされたのですよ。騎士のように膝を曲げて、ソラ様の手の甲に口付けをしたのです」

「きゃーーっ!!」

「ちょっ、エルーちゃん!」

「ソラ様はお恥ずかしいでしょうから、代わりにお答えして差し上げようかと」


 そ、そういうのは共有したくなかったな。

 ちょっと恥ずかしいよ……。


「では、夜の方は?」

「ええっ!?」

「どちらが攻められるのですか?」

「うぅっ……わ、私はいつも襲われている側ですから……」

「まぁ❤️」

「うぅぅ……」

「そこまでにしてくれないかな」

「へっ……?」

「う、嘘っ……!」


 皆がカップを落とし、手を口に当て驚きを隠せないでいた。

 何故なら、奥からやってきたのは……。


「涼花様……っ!?」

「誰から聞いたんですか?折角隠して来たのに……!」

「内緒だよ」


 大方、エリス様かアヴリルさんだろうな……。


「きゃあああっ!」


 しーっと人差し指を立てるその唇がそこにいた全員を魅了してしまう。

 あてられて倒れている人も何人か居たようだが、皆その光景を逃さないようにと気力だけで立ち、目を見開いていた。

 流石精鋭揃い、推しを見るためであれば面構えが違う。


「あ、あの……その、隠すつもりはなくて……!」

「私の恋路を邪魔しないのなら別に構わないよ」

「それで、ソラちゃんはここで何をしているのかな?」


 なんか浮気を疑われてる……?


「実は紺碧薔薇会の皆さんには社交界でお世話になっているんです。涼花さんが毒を飲んで倒れた時に私に知らせてくださったのもこの中の人たちでしたし」

「そうだったのか。それは大変お世話になったようだ。そうだ、私もたまに話を聞いてくれる相手が欲しいから、ここの皆にはお友達になってくれると嬉しいよ」

「は、はわわわわ……!そんな……!」

「こ、光栄ですわ……!」

「わたくしの願いが叶うなんて……!生きてて良かったです」


 ファンサが凄いな、流石は王子様と呼ばれるだけはある。


「お友達になったのなら、ちょうどいいかな。だからお礼に皆さんには私達の結婚式の招待状をお渡ししようかと」

「「えええええっ!?」」

「ふふ、涼花さんの晴れ舞台、是非見に来てくださいね♪」

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