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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第986話 認々

「運命?説明して、二人とも。どうしちゃったの?」


 顔を真っ赤にしておすましをする姿に以前の面白い彼女の面影はなかった。

 学園で会っていた時とはまるで別人のようだ。


「本当に自覚がおありでありませんの?ソラお姉さまが誑かしたせいですわ……」

「まさか……」

「そ、その……()()()()()に救っていたたたたた……」

「世紀末みたいになってるから!落ち着いて!」


 でも、そうか。

 僕の正体になんてとっくに気付いていたんだね。


「やっぱり……私が治療した時に()()いたんだね?」

「は、はいぃ……はいぃ……」


 毒で気を失う間際だったから気付いていなかったかと思っていたが、流石にハイエルフといったところか。

 僕の魔力の色を視て、聖女であることだけでなく、全属性所持者であることも分かってしまったのだろう。


「いや、でもそれがどうして誑かしたなんて話になるの?ただの一度助けたくらいで……」

「ソラちゃん?」

「ソラ様?」


 あっ、また「自分を過小評価するな」と言わんばかりの目。


「それ、女性からすると十分に惚れる理由になりますわよ……」


 ルージュちゃんの物言いに、ララちゃん以外の皆からうんうんと同意を得られてしまう。


「でも、その時はカエルムだったから、あの姿がたまたま好きだったってだけじゃないの?」


 無理すればずっとあの姿でもいられるけれど、維持するのは割と体力を使う。

 僕を労ってか妻たちからは「たまに味変するくらいでいい」と言われたし、僕もカエルムになるつもりはない。

 妻には何故か不評なんだよな、未来の僕(カエルム)……。


「いいえ!私はその容姿ではなく魔力を視て一目惚れした……のです」

「別に無理して敬語を使わなくて大丈夫だよ」

「『そのままの君が好きだよ』とソラちゃんは言っているんだよ」

「……!」


 変な代弁しないでよ、涼花さん。

 まぁでも僕はどこにも属していないんだし、そんな相手に対してわざわざアイデンティティーを失う必要もないとは思っている。


「学園でも会ったことあるんだし、その時に視てたよね?」

「あの時はただ綺麗としか思ってなかった。今は……オーロラを見ているみたい……」


 「魔力に惚れた」なんて、生まれてこのかた言われたこともない口説き文句だ。


「でも、これはエリス様に貰ったもの。全属性ならエリス様もそうだし……」

「そんなエリス様とソラ様は夫婦」

『よく分かってるわね』


 うにゅりと僕の手から魔法陣を作って飛び出してきた。

 話聞いてたのか……。


「これが、魔力色尊い(てぇてぇ)の最高峰……!」


 いや、急に何言ってんの……?


「ソフィア姉……私、このお二方にお仕えしたい!」

「駄目よ!お姉ちゃん認めないわよ!」

「妊活、ニンニン!認知して、ニンニン……!」


 そんな妊妊認認(ニンニンニンニン)、あってたまるか……。

 ソフィア女王はコホンと咳払いをしたのち、僕に頭を下げた。


「今回のことで、聖国はソラ様にご恩がございます。そこで私はソラ様のために治外法権でありながら表向きは聖国の領地をご用意いたします。元々聖国王家が所持している領地の一部です」

「それって単に押し付けたいだけじゃ……」

「いいえ。ララ、あなたはこれからゼクス大公となり、その領地をソラ様の代わりに治めなさい。それがソラ様と婚約する条件です」


 それって、小さな国を貰うようなものじゃないか。

 お金持ちが別荘くれる感覚で、そんなもの渡すんじゃないよ……。


「その領地、私に何のメリットが?」

「そうだそうだ!ソフィア姉、ソラ様の益にならないのなら……」

「今回の件でソラ様は架空の貴族位を持つことのメリットをお知りになられたはず」


 まぁこうしてパーティーに参加するときに聖女院からの参加だと一部の人にはすぐにバレてしまうという欠点があるのは分かる。


「ですから、大公の領地内にアンゲロス名誉子爵という架空の子爵位をご用意いたします。どのように使っていただいても構いません。一代爵位でございますが、それで十分でございましょう?」


 天使(アンゲロス)とはまた安直な……。

 まぁ確かに僕は不老不死だから、一代限りの爵位だとしてもそれは「永遠に持っていていい」と言われたようなものだ。


「うーん、でもまたすぐバレるかも……」

「であれば、ララに領地内の民に自由に爵位を渡す権限を持たせますから、あとはご随意に。お気に入りの人に爵位を与えても構いません」


 む……それは妻たちに爵位を渡しておけるってことか……。


「ソラ様、据え膳ですよっ!」


 あれ、なにこのデジャヴ……。


「わ、わかったよ……」


 一途な女の子がぱあぁっと晴れやかな顔になるのを見て、僕はやはりそういう人に弱いんだろうなと目を背けながらそう思った。

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