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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第975話 人相

 魔帝国に向かう日、シュライヒ公爵邸に赴くと先客がいた。

 集合場所をシュライヒ公爵邸にしたのは僕なりの抵抗だ。


「ソ……カエルム様!」

「胡桃ちゃん、ヴァルグリードさん、お待たせしましたか?」

「いえ」

「胡桃ちゃんまで巻き込んでしまい申し訳ない」

「い、いいえ。わ、私もその……頼られて嬉しかったですから……」


 おや、おやおや。

 歯切れの悪い胡桃ちゃんは珍しいと思ったら、えっ、まさかそうなの……?

 まぁヴァルグリードさん顔はいいからなぁ……。


「それで、ソフィア陛下がいらっしゃる理由は?」


 あからさまに嫌そうな演技をする僕に、構わず詰め寄るソフィアさん。


「その、今回はせめて私の使者も連れていってはくださいませんか?今回の謝罪に伺いたいのです」


 胡桃ちゃんは一応五国の代表として行くものの、聖国の代表としてではない。

 だから聖国の代表として先に謝って他国より親密になろうという魂胆が透けて見えている。

 まぁでもこれくらいの厚顔無恥さがなければ女王は務まらないのかもしれない。


「陛下、今陛下が行うべきは王家の保身などではなく、一人の被害者である次期公爵の名誉を回復することでは?」

「そ、それは……」


 あのパーティーに参加したのはすべての貴族ではない。

 ペリドット嬢のせいで今でも貴族達に悪評が広まっているのだから、それをただすのが先だろう。


「ルージュを泣き寝入りさせるつもりでしたら、こちらにも考えがございますから」


 セレーナお義母さんのチクチク言葉がいつにも増してる。

 そのまま「おととい来やがれ」とでも言いそうなくらいだ。

 まぁでもルージュちゃんにも選択肢をあげるべきだよね。


「そ、そんなつもりは……」

「我々にお願いするのでしたら、まずお約束したものは終わっているかを提示すべきでは?」


 二日後にマクリミアンとサザンクロスを引き取ると言ったが、揃えられなかったようだ。


「それがその、もうサザンクロス伯爵は我が国を発っていた後でして……。西の国(セイクラッド)にお伺いを立てるにも時間が……」


 僕だってせっかく大掃除が終わった聖国で今王家が揺らいだら反対派に餌をやることになるくらいは分かってる。

 でもそれで約束も守れない人が守られて、罪のない者が淘汰されるのは流石におかしい。


「ふむ、随分と面の皮のお厚いことだ。ではこれは勉強料。二度目はないですよ」

「は、はい……」


 貴族は体面を気にする人が多く、一度間違えるとそれをごまかす嘘をついて誤魔化そうとする人が多い。


「代わりにルージュちゃんの婚約者は聖女院が取り持つことになった。ルージュちゃん、この中から自分で調べ、判断しなさい」

「はい。私に選択権を与えていただき、ありがとうございますわ……」


 聖女院が身元を調査し、僕も会ったことのある令息の中から候補をいくつか選び、その調査報告書をルージュちゃんに渡す。

 王家が用意したとしても本来あり得ない選択肢を用意して実質固定の択しか選ばせないようにするようなことが多いからね。


「ルージュ様。もしこの中に候補がいらっしゃらないようでしたら、こちらをご検討ください」

「マリーナ。それは没収だよ」


 ソラ()の顔が書かれた紙を報告書に混ぜようとしたエルーちゃんを止める。

 勝手に妻を増やそうとするんじゃないよ。

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