第972話 姉弟
闇ギルドの人たちを捕まえ、聖女院に帰る。
後宮に帰り全員に清浄をかけると糸が切れたように元の自分の姿に戻り、ベッドに横たわる。
「つ、疲れた……」
「お帰りなさいませ、ソラ様、エルーシア様、涼花様」
「ただいま、メルヴィナお姉ちゃん」
カエルムの姿を維持していたから、なかなかに疲れた。
なんというか、一日中ずっと変顔しているような感じ。
それよりなにより、気を遣うのが一番疲れた。
「力が増えてできることも増えたけれど、その分精神的に疲れるようになったかも……」
僕もなるべく平静でいないと力や魔法の制御を誤り人を傷つけたり殺めかねない。
手加減するには如何せんピーキーすぎる。
「お疲れ様です、ソラ様」
「わっ!」
頬がひたりとひんやりする。
急に膝枕してくれたエルーちゃんはまだマリーナの姿のままだった。
「まあっ!」
「ああっ、これです、これが私が求めていたソラ様です……!ああ、染み渡ります……!」
「僕の未来の姿、そんなに不評だったの……?」
普段東子ちゃんやメルヴィナお姉ちゃんが言ってるようなことをエルーちゃんが言ってる……。
外部の人には少なからず好かれていた気がしたんだけど、妻達からは不人気なの、何でなんだろ……。
やっぱり妻達はみんなショタコンなんじゃないの?
「ふ、不評というわけではなかったと思いますが。何というかその……今まで子供だと思っていた殿方が急に大人びてきて、立場が逆転するようなものに近い感情といいますか……」
「どうしてもショタ扱いしたいのはなんなの……?」
「『ショタはいいぞ』と梓様も名言を残していらっしゃいましたから。いいものなのですよ」
「それは迷ってる方の迷言だよ……。あんな歪んだ性癖の身内の言葉、参考にしないの!」
「そんな……。最近梓様のお言葉を収集しているのですが、どれも共感できるような内容ばかりで……」
そんなの、インターネットミームで会話しているようなもんで、使うものじゃないんだってば。
「ところで、どうしてエルーちゃんはもとに戻らないの?」
「そ、それはほら……この姿で出来ることをしておきたかったからと言いますか……」
しておきたかったこと……。
「うーん、エルーちゃんで思い付きそうなのがひとつしかないんだけど……」
「せっかくですもの、皆さんで『おねショタ』、いたしません?」
誰だ、エルーちゃんにろくでもないことをふきこんだ嶺梓とかいう従姉は……!!
「まぁ……!それは素敵なご提案ですね♪」
「誰がソラちゃんを一番甘やかせられるか、勝負といこうじゃないか」
「ちょっ、脱ぎ脱ぎしないでよっ!?」
『はー、魔帝国はろくでなしが多くて疲れたわ……。ただいまーって、何してんのよ?』
「だ、旦那様っ!?」
「お帰りなさいませ、エリス様、シルヴィア様!」
「ソラ様を甘やかし選手権でございます」
『何、その面白そうなのっ!?』
「我も参加するぞっ!」
エリス様とシルヴィだけじゃなくて、話を聞いていた教皇龍ちゃんまで出てきた。
「胸に自信のある方はふるってご参加ください!」
そこは腕じゃないの?
その後、ナニを奮ったのか振るったのか震わせたのか分からないけれど、僕は年上のお姉さんズに物量で押し倒され、あっという間に組敷かれ、そのまましっぽりと搾り取られたのだった。
おねショタこわい。




