第970話 探知
「ソフィア陛下、地下の不法侵入者達を駆逐するために施設を破壊しても?」
「……私に許可を貰う必要はあるのですか?」
「そこはほら、形式上あなたのお城ですから……」
にっこりと笑ってみせるも、ソフィアさんからひきつった顔は抜けなかった。
三年前に僕を次期聖徒会長に就かせた時と立場が逆転したような気がする。
「そうですね……では交渉といきましょう。僕は今から元凶を絶つために今からここに大穴を空けます。もし大穴を治してほしければ二日以内にサザンクロス伯爵家とマクリミアン子爵家を全員差し出してください」
「っ……!?」
言うは易く行うは難し。
でもたとえそれが修羅の道だろうと、今回に関しては妥協する気は毛頭ない。
僕が妥協してしまえば、義妹がまた危険に晒されることになるかもしれないから。
「もし二日以内に捕まらなかったら、どうするおつもりですか……?」
「地中探知」
膝を折り地に手をつけると、地中に微弱な魔力を広げていき地中の構造を読み取る土魔法を使う。
自分の意識がどんどん深く潜っていくはじめての感覚に慣れないながらも、その潜るスピードはどんどん早くなっていく。
……見つけた。
「担保はそうですね……もし二日以内に両家が全員揃わないようでしたら、その二家のお屋敷はなくしてしまいましょうか」
「ちょっ……!?」
「なくなった領地は慰謝料として西の国王家と次期シュライヒ公爵にそれぞれ引き渡すとして……」
「……!」
シュライヒ公爵家と敢えて言わなかったのは、公爵家と聖国王家が繋がっている以上、揉み消す可能性もあったからだ。
「余った使用人は私たちが預かることにしましょう。丁度開発部が人手が足りなくて困っていたんです。サツキ様もお喜びになりますよ」
マクリミアン家は流石に令嬢を二人とも預かっているのだから来ないわけがない。
ただ問題はサザンクロス伯爵家だ。
計画が失敗して西の国に逃げた可能性がある。
「はぁ、また無理難題を……」
「身から出た錆だろう。むしろ我々聖女院は尻拭いをしているくらいの自覚は持っていただきたい、ソフィア陛下」
涼花さんが苦言を言うのは珍しい。
「ああ、連帯責任ですから、もしサザンクロス伯爵家が集まらなければマクリミアンのお屋敷も消えます」
こう言えば彼らも必死に探すか、証拠を出すことだろう。
「マリーナ、ルージュをよろしく」
「私も行く」
「では涼花様以外は離れてください」
ディバインレーザーで50メートル長の穴を空けていきながら、涼花さんを抱える。
天使の羽がなくとも僕たち天使は魔力で飛んでいるから重力を無視して等速で降りることができる。
「お姫様抱っこされたのは母上以来かもしれないな……」
「『王子様はいつもする側でしたからね……』」
「こういう背伸びも、悪くない」
だから背伸び扱いしないでってば……。
国境の警備が厳重になったのに、どうやって侵入したかと思うかもしれないが、おそらく彼らは転移魔法で国境を通っていないのだろう。
可能性があるとすれば、邪神の転移。
彼らはそれに巻き込まれたか、それか戦争の道具として使われたが、あっという間に終戦してしまい敗残兵としてこの国に残っていたか、だ。
だがどちらにせよ敗戦の事実と魔帝国からの意向はこの人たちも知っているということは、現在の魔帝国側の思想と食い違っているということだ。
「な、なんだぁ!?」
「眷属憑依――教皇龍――」
龍の羽根が生えてきて、身体に鱗が生えてくる。
「『貴様が闇ギルドのマスター、アースウェインか。王宮領地への不法侵入と王家への集団侵略行為により検挙する』」




