第968話 角毒
「さて、ここからは尋問だが……君達は残るつもりかな?」
「……私たちにはそれを見届ける資格があるのでは?何より、知らずに居るなんて堪えられませんわ」
別にそんなに酷いことをするつもりもないけれど、義妹の前で尋問なんてやりづらくて仕方ない。
<メルヴィナお姉ちゃん、今いい?>
<ひぁぁ……んっ!お声が……!だめぇぇっ!>
何してたの、一体……?
<精のつくにおい袋を少々……>
……またぱんつ嗅いでたの……?
神流ちゃんより犬してるよ。
前世、天使じゃなくて犬の獣人だったんじゃないの……?
「……眷属憑依――メルヴィナ――」
メルヴィナさんを憑依させた僕は先ほどペリドット嬢がヌーベルと呼んだ双角の魔族の肩に触れる。
「っ……!」
「カエルム様……?」
た、耐えた……!
何とか耐えたぞ……もういっそ褒めてほしい。
先ほど僕のぱんつでナニをしていたのか知らないけど、知ってしまった。
女の快楽は男の何倍もあるなんて良く聞くけど、まさかその快楽は憑依したら引き継ぐというのを忘れていたなんて……。
「『あなた方が使っていた毒はポイズンバッファローの角を煎じて作られた『ホーンポイズン』と呼ばれるアイテムですね』」
「…………」
「……口を開かせるかい?」
「『いえ、舌を噛まれても困りますから。ホーンポイズンは魔族には無害ですが、人族には毒となるもの。そしてそれは魔帝国でしか手に入れられないものです』」
「「「っ……!?」」」
表情が分かりやすくて助かる。
別にメルヴィナお姉ちゃんの力を借りなくても良かったかもしれない。
まぁ、念には念を、だ。
「『どうして知っているのか、知りたそうですね。三年前、こちらにいらっしゃる聖女葵様の娘であらせられる涼花様が呷った毒は闇商人が流通を行ったものでした。あれは魔族であるインキュバスが広めたものだった。そしてその流通の請求先に書かれていた魔帝国。そして今回も同じルートから仕入れていた……』」
押収した証拠書類同士を突合させる。
まさか三年前の書類がすぐ出てくるとは思わなかったようだ。
魔帝国は魔境を抜けた先にあるゲームでは行けない場所。
だから本来僕はその毒の入手先を知り得ない。
最初は僕も『魔帝国』は魔境のことを指しており、形式上邪神や魔王が治める国のことかと思っていたが、あてが外れた。
だがゲームとは違って今は境界線などないし、それ以上の情報も入ってくる。
「『君達の目的は、五国の和平の阻止。そして首謀者は……ここにはいないみたいだね』」
「「っ!?」」
「『へぇ、統率者はここの地下に居るのか……灯台もと暗しとはよく言ったものだ。名前は……そう、アースウェイン』」
「んーーっ!!」
メルヴィナお姉ちゃんは天使になって相手の心が読めるようになった。
そしてそれを憑依させた僕もまた――
「『生易しいとでも思っていたか?僕にはそもそも君達を拷問なんてする必要性がないんだよ。何故なら、君達の心の中が読めるのだから。私に隠し事は通用しないよ』」




