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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第13章 天佑神助
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第96話 施設

 夏休み初日。

 僕はソーニャさんに誘われて孤児院に泊まりに来ていた。


「ソーニャおねぇちゃんと、だいせいじょさまだ!」

「きょうはメイドさんもいる!」


 お泊まりということで、エルーちゃんも同行することになった。


「「こんにちは!」」

「こんにちは」


 わらわらと集まってくる子達が可愛らしい。


「院長先生もこんにちは」

「ご無沙汰しております。その節はありがとうございました。それに、改装費まで出してくださり、本当に感謝に堪えません……」

「顔を上げてください。私は、このお祖母ちゃんの遺した孤児院を大切にしたいだけですから……。この施設を維持して、子供達を育てていらっしゃる院長先生の立派な行いに、私は感謝しているんです。本当に、ありがとうございます」

「ありがとうございます……」


 施設を案内されると、どこも改装されて綺麗になっていた。

 使っていない部屋もベッドが追加されて子供が増えても良いようにしたり、子供達の遊びスペースなども増えた他、魔法の練習場なども用意して、庭でやって近所に迷惑をかけないようになっている。




「はい、痛いの飛んでいったね」

「だいせいじょさま、すごい!」


 僕は孤児院のみんなの具合が悪くないか、『(カン)グラス』で順番に見ていった。


 とはいえあのとき疫病を治すついでに他の病気も一緒に治してしまったし、綺麗になった環境で病気などが起こるはずもなく……。

 少し風邪を引いてしまったとか、子供特有の遊んでいて転んで怪我をした程度のものだった。


 聞きそびれていたのだけれど、この孤児院の名前はお祖母ちゃんの名前から"カエデ"と付けられたのだとか。


「この"カエデ"が初代聖女、楓様の施設だったことは有名ですから。サクラ様のあの御告げから、色々な方々から寄付をいただきまして……。あまりにもいただいてしまったので、他の孤児院に配っているのです。大聖女様の影響力は凄まじいものですね……」


「えっ……ちょっと待ってください」

「どうしたの、ソラ様?」


 首をかしげるソーニャさん。


「サクラさんの御告げっていつやったんですか……?私、その内容聞いた覚えがないんですが……」

「あ……」


 院長先生がしまったという顔をした。


「私、もしかして言ってはいけないことを……?」

「ああ、気にしないでください。院長先生は悪くないです」

「ソラ様、ちょっと顔怖い」

「いえ……ちょっとサクラさんの秘密主義にうんざりしただけですから……」


 詳しく聞いてみると、僕がお茶会の帰りにハインリヒ王に頼みごとをされ、クラッシュボアを倒して聖女学園のみんなの制服を届けた日、熱でぶっ倒れていた時に御告げしたらしい。

 内容は、僕のお祖母ちゃんが初代聖女だから、僕に会ったらお祖母ちゃんのやってきたことを伝えてほしいというものだった。


 粋なことをしてくれただけに怒るに怒れず、僕の怒気は霧散した。


「いつもの、可愛い顔」

「いつも可愛いソーニャさんには言われたくないですね……」

「……」


 珍しく面食らった顔をするソーニャさん。


「もしかして……口説かれてる?」

「くどっ……!?ち、ちがいますからっ!」

「なんだ、残念」


 なにその反応……。




 その日は子供達の希望で、大きな布団を敷いてみんなで雑魚寝した。

 たまにはこういうのもいいかも。

 すやすや眠りにつくみんなを見ながら、僕も眠りに落ちていった。

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