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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第966話 違法

「マーク伯父様……」

「ルージュ、すまなかった……。君が無事でよかった……」

「いいえ……私も一人で解決しようとしなければ……」


 いくら貴族の義務とはいえ、学生に聖徒会、兼業で領地の経営なんてやっていれば十分に過労だろう。

 その上婚約者のお守りという心労の塊を与えるなんて、両手両足を鎖で縛られながら背中に岩を叩きつけられているようなものだ。


<ソラ様も学業に加え聖徒会長、先生業に聖女様のお務め、弟子取りに正しい戦闘技術の布教、果てには邪神軍の排除までなさっていたではありませんか?>

<今思えば重労働だったかもしれないね。でもやり甲斐はあったから……>

<武術大会の頃に夜遅く寮にお戻りになられてから『魔術大全』と『武術大全』を執筆なさっていた時は私の方が先に泣き言を言ってしまいましたし。深夜3時にお手洗いに行くため起きた際にランプが点いていた時にはぎょっとしました……>


 結果僕は人間としては18年しか生きられなかったんだから、過労はやりすぎると人間は死ぬという教訓としては正しい教材だと思うよ?


<そこは胸を張るところではないと思います……>

「カエルム様もありがとうございますわ。あなた様がいらっしゃらなければ、大切な友人であるララ様を失うところでした……」

「いいんだ、君が無事でよかった。でもね、辛かったら辛いって言っていいんだ。少なくとも僕は、どんな我が儘を言っても、君の味方だから」


 抱き締めると、僕より細いからだに彼女の頑張りが垣間見得た。

 心を痛めるということは、それだけ命の危険に曝すことなのだと実感した。


「うぐっ……ぐすっ……」


 漏れ出るように涙をする様は、泣き慣れていないことの証。

 子供だ大人だ貴族だ平民だなんて関係ない。

 辛いときに泣けない環境なんて、そもそもあってはいけないのだ。


「そうだね……もし次に彼女に危害が加わるようなら、僕が拐ってしまうことにしよう」

「それは、『次はない』と……いうことですか?」

「そう言ったつもりですが?」


 『こんなことなら、もっと沢山甘やかしておけばよかった。』

 お父さんに再会してから言われた言葉を一言一句違わずに思うとは思わなかった。


「カエルム様!そ、それより……エメラルド様を保護したのは、その……さるお方かと存じますが……」

「確かに彼女は聖女院で預かっている。盗む形になってしまって申し訳ないが、あそこは安全だから安心してほしい」

「いいえ、そうではないのですわ!ペリドットは……彼女は絶対に口を割りません。ですから彼女の証言が、今こそ必要なのですわ……!」

「必要ないさ。そもそも今回、マクリミアン子爵とペリドット嬢には王家の招待状の偽造の容疑がかけられている。王家を騙すのは重罪、余罪があればすべて暴かれるだろう。それにエメラルド嬢にこれ以上傷付いてもらいたくもないからね」


 家に味方のいない環境は僕にもよく分かる。

 あれは地獄だ。


「違いますわ!あの女が一人であのようなことを企む筈がありませんもの!」

「なるほど、テーラー家でもそこまでは掴めていたんだね」

「ええ。ですが、それ以上のことは何も……」

「どういうことですか?」

「本来毒を飲ませる筈だった相手はララ王女ではなくルージュちゃんだった。ペリドット嬢が依頼した集団は最近聖国の冒険者達を揺るがせている違法傭兵集団、『闇ギルド』だ」

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