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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第963話 照明

「なんだ、急に照明が……!?」

「誰か、照明を出せ!!」


 王宮で使うようなシャンデリアの照明が急に落ちるなんて、本来あり得ないことだ。

 それも、全箇所同時に消えたのだ。


 この世界の照明は魔道具で魔力で動くものだが、元々は人が近づくとその人から魔力を強制的に吸収して光らせる構造になっていた。

 しかしこれも魔力量が少ない人の場合、勝手に吸収するから魔力の自然回復量が少ない人は回復量が追い付かずに気分が悪くなるので、そのような家庭では蝋燭やランタンを使う場合もあったらしい。


 けれど聖女院が『魔蓄機』を作ったことで、最近では魔力の電線である『魔線』と魔力を貯めておく『魔蓄機』を繋ぎ、人が直接魔力を注がなくても、貯めた魔力から光らせておくことができるようになっている。


 お金のあまりない家では全ての照明に一つの魔蓄機を直列に繋ぐ。

 こうすることで、二つ目の魔蓄機が買えたときに恩恵が大きいからだ。

 とはいえデメリットとして、魔蓄機の一部が故障しただけで全ての照明が落ちる。


 でも王家のようなお金持ちであれば、照明10個毎に対して魔蓄機が並列に繋がれている。

 だから魔蓄機などに不備があったとしても照明が落ちるのは一部のみになるはずだ。

 王宮は広いから一気に点けたり消せたりした方が便利だと思うかもしれないが、一気に暗くできてしまうとこのように犯罪の温床となる。

 だから朝一気に点けるのが多少手間になってでも警備が行き届きやすくするのが貴族流なのだそうだ。


 僕は一つの可能性を考え、暗く見えなくなっていることを活用して自分の神体をハイエルフにし、『魔力視』で天井を覗いた。

 するとまるで天井に大量に人影がうごめいていた。

 うわぁ、なんか蟻みたいで気持ち悪……。


 どうやら照明の回路から直接魔力を吸い取ることで、照明に魔力が向かわずに光らせることができないようにしているようだ。


<涼花さん、天井に賊がいるから、落とせる?>

<何だって……!?>


「七魔覚醒」

「超重力」


 念のため僕が七魔覚醒で涼花さんのステータスを三倍にすると、涼花さんが重力魔法で落としてくれた。

 ばたりばたりと人が天井から落ち、這いつくばっていく。


「「おわあああっ!?」」

「ぐああっ!?」


 天井だけでなく、僕たち以外のその場にいた貴族やメイド、すべての人々が涼花さんの前に跪く。

 それはもちろん、ソフィア女王も、サンドラ女王もだ。


「くっ……」

「姉弟子、少し鈍ったのでは?」

「戦線に立った人と私達を比べないでよっ……!」


 涼花さんも僕の加護とバフありであること忘れてない?


 相手が魔力吸収を使うから、もしかすると僕たちも魔法を使えないかと思ったが、普通に魔法を使えているところからすると吸収速度を上回る魔力消費をするか、または吸収範囲から離れることで回避できるようだ。

 今回は魔蓄機の魔力を全員で吸収しきったらしく、引き剥がしても照明は元に戻らなかった。


氷の街灯(アイス・シャンデリア)


 僕は元の人種族の大人(カエルム)の姿に戻ると、氷でできた透明ガラスの中に炎のランプで照らす。

 それを100個くらい出せば、このフロア一帯の照明は賄える。


「綺麗……」

「素敵……!」

「ご夫人方に喜んでいただけて、光栄でございます」

「まあっ!」

「年取って熟女キラー発動してんじゃないわよ……」


 ちょっとキザすぎたのか、マヤさんから苦情がきてしまった。


「マヤ様も黒いドレス、とてもお似合いですよ」

「っ……!」


 キッと睨み付けられたけど顔真っ赤だ、珍しい。


「暗がりに紛れて、失敗した執事を処理しようとしていたようだ」


 いつの間にか涼花さんがもう一人も跪かせていた。


「もががもがっ!」

「さて、()()()()()()。仔細をお聞かせ願おう」


 そう、毒を盛った執事も、天井にいた人たちも、そして暗がりで執事を口封じしようとした彼らも、すべて魔族だったのだ。

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