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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第961話 捜査

 正直、聞くに耐えない時間だった。

 倒れたルージュちゃんに口なしであることをいいことに、あることないこと言いたい放題。

 こんな環境に身を置かれていれば、ノイローゼになってもおかしくないだろう。


「僕はさるところで捜査官を勤めていてね。とある事件を追っているんだ」

「そ、そうなのですね!」

「最近マクリミアン子爵令嬢が失踪したという事件があって……君も自分のご家族のことだから聞いているだろう?」

「まぁ!それは妹のペリドットのことですね……。病弱ですのに、拐われてしまって……今家族総出で探しているのです」


 あくまでも拐われたのはペリドット嬢であると念押しをし、()()()()の名誉を守るために嘘をつく。


 スキル『鑑定』で名前が分かる僕に偽名など通用しない。

 ここにいるのはペリドット嬢であり、エメラルド嬢はこの会場にはいない。


「おかしいな?家出したのはエメラルド・マクリミアン、それに彼女は拐われたのではなく自分から家出したと聞いているが……。家出したはずのエメラルド嬢がこんなところで何をしているんだい?」

「だ、誰がそのような嘘を?失踪したのは、ペリドットで間違いありません!」

「ふむ……その家出をしたエメラルド・マクリミアン嬢本人を()()()()()()して、直接聞いたんだよ。『家族に追われている、私が見つかれば今度こそ殺されるかもしれない』とね。まさか自分のことなのに、覚えていないのかい?」


 そう、ルージュちゃんはエメラルド嬢がペリドット嬢であることを掴んでいた。

 そしてその証拠を得るためにルージュちゃんはエメラルド嬢を匿ったのだが、忍ちゃんの調査でマクリミアン家の者が少女を探して荒くれ者を雇い、各地で治安が悪くなっていると分かった。

 貴重な証人を奪われるわけにはいかないので、ひとまず忍ちゃんにはエメラルド嬢を保護してもらった。

 先ほどルージュちゃんに伝えたのは、「エメラルド嬢は聖女院で預かってる」だった。


 聖女院ほど匿うのに安全な場所はない。

 そして聖女院の事実確認が誤りであるなんて、いち貴族が言えるわけがない。

 聖女院を否定することは、聖女を否定することにほかならないからだ。

 むしろ聖女が間違ったことを言わない信頼があるからこそ僕たちは聖女を任されているし、聖女院に勤めてもらっているのだから。


 ざわざわと周りの貴族が騒ぎ立てる。

 今まで従順に従わせていた本物のエメラルド嬢が、事実とは違う証言をしたことに戸惑っているのだろうか?


「っ……!」


 そして自らが招いた矛盾に気が付いたようだ。

 聖女の調査内容を疑うことはできない以上、後は嘘つきパズルの要領だ。

 聖女院が確認した事象は『保護したのはエメラルド・マクリミアンであり、マクリミアン家から追われている』ということ。


 もし『私がエメラルドで、拐われたペリドットが嘘をついている』と嘘を突き通すつもりなら、ペリドット嬢は『あの聖女院にさえ嘘をつくような女性』というレッテルを貼られ、今後病弱設定から解放されたときに不都合が付いて回る。


 逆に『私がペリドット本人で、エメラルドが嘘をついている』などと真実を認めてしまえば、保護したのがエメラルド嬢本人だと分かる上、王家のパーティーに招待状を偽って入場したことを認めることになるし、男遊びをしていた張本人がエメラルドではなくペリドットだと言いふらすことになってしまう。


「さて、君は誰で、どちらが正しいことを言っているか、答えてもらおうか?」

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