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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第12章 韋編三絶
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閑話26 女風呂

【エルーシア視点】

 リリエラ様の送別会の後、私達は共有浴場で身を綺麗にしておりました。


「エルーちゃん、こちらへどうぞ」


 私が体を洗い終え浴槽に向かうといつものように長風呂のフローリアさんがいらっしゃいます。

 何がとはいいませんが、相変わらず浮いているフローリアさんの一部が気になって思わず「浮いてます……」とぼやいてしまいました。

 大きいと浮くというのは、ここに来てはじめて知ったことです……。


「エルーちゃん、実は……()()()()()()()()()()()()()()()()()()を聞いたの……」

「えっ……」


 それはつまり、ソラ様が殿方であるということです。


「シエラ様が、御告げになられたのですか?」

「ええ。保護者でもある私には伝えておきたかったからって……」

「なるほど、そうだったのですね」

「最初はびっくりしたわ。でも、同時にすべてのことに納得したわ……」

「……」

「本当にあの子は優しい子ね」

「はいっ!」


 私の御主人様は、とても素敵なお方です。




「隣、いいかしら?」

「はい、リリエラ様」


 そこへリリエラ様が入ってきました。

 流石にフローリアさんほど大きなお胸はございませんが、流石は侯爵のご令嬢、貧相な私と比べるまでもない、完璧なプロポーションです。


「今回は貴女にも感謝をしなければなりません。エルーシアさん、私の戦闘実技の防御面を強化していただきありがとうございます。まだ習ったばかりなので上手くはできませんが、貴女のお陰で障壁の知識について深く知ることができました」

「いえ、私のはシエラ様の受け売りですので……」


「ふふ、でもこのままですと、私はエルーシアさんもライバル視しないとなりませんわね。まさかここまで成績が良くなるとは……」

「わ、私なんてまだまだです……。シエラ様のお陰です」


 ここまで成績が良くなったのはひとえにソラ様が丁寧に教えてくださったからです。


「従者にまで謙遜の血が伝播しているんですもの……。それ、イザベラさんには嫌味に聞こえてしまいますわよ」

「そ、そんなつもりでは……」

「本当なら、貴女にも様じゃなくて普通に呼ばれたいのですけどね……」

「それは……御容赦いただけませんでしょうか……」


 リリエラ様は侯爵家の貴族様で、私はただの平民です。

 流石にさん付けで呼ぶなどという失礼なことは、たとえご本人から許していただけていたとしても、他の人に聞かれてしまっては主様であるソラ様の外聞が悪くなってしまうかもしれません。


「時々忘れてしまうのですけれど、貴女も侍女ですものね……。私も流石に無理強いはできませんから、代わりに今まで以上に仲良くして貰えると嬉しいわ」

「は、はいっ!」




「隣、失礼するよ」


 リリエラ様の隣にエレノア様がお入りになりました。

 エレノア様もとても白い肌で貴族の方かと思ってしまうほどのお方です。

 いつもはお洒落に気を遣っていませんが、お風呂場で見せる素の美貌は別人かと思うほどです。


「エレノア様も相変わらずの主席、おめでとうございます」

「ははは、今日もソフィア君に悪態をつかれてしまったよ。でも君だって、ボクに続いて900点代を取っているじゃないか」

「続いたのはシエラさんが先ですけれどね」

「流石にあれには敵わないよ……」


「エレノア様をそう言わしめるとは……。シエラさんは本当にとんでもない御方なのですね」


 私からすれば、900点代を取るのですらできないことですから、900点代を取るリリエラ様も、聖女以外で初めて950点代を取られるエレノア様も、歴代聖女様すら成し遂げなかった全教科ほぼ満点を当たり前のように取るソラ様も信じられないような方々です。


「965点、歴代の現役聖女様に届く程の点数を取られた秘訣は何かあるのでしょうか?」

「いや、単純にソラ様のお陰だよ」

「ソラ様の……?」

「ボクは友人だからね。ボクは戦闘実技が大の苦手でね。それのせいで得点を落としているようなもんだったんだが、ソラ様に直接教えて貰って上がっただけさ」

「そ、そうなのですね。ソラ様とご友人だなんて、羨ましいですわ」

「いや、キミは……」


 むしろリリエラ様の方がソラ様の親友ですからね……。

 ソラ様は卒業まで親友に明かされないおつもりなのでしょうか……?

 御二人の仲の良い会話を聞くたびに、ソラ様が作られたその壁を目の当たりにして悲しくなってしまいます。




「お邪魔します」


 そこへシェリル様、セラフィー様、ミア様、ソーニャさんがいらっしゃいました。


「シエラちゃん以外は、全員揃ったね」

「シエラさんと一緒に入りたかったですわ……。私、それを楽しみにしていましたのに……」


 ソラ様はもちろんいらっしゃいません。

 いえ、いらしたら事件ではあるのですが……。


 私も従者としてソラ様に見られる覚悟はしていますが、流石に恥ずかしいです。




「しかし、ここの皆は改めて粒揃いの子達ね……」

「それをフローリアさんが言いますか……。こんなっ涼花程の大きさのものを持っておいてっ……」

「きゃあっ!ミアちゃん!も、もう……揉みし抱くのはやめてっ」


 確かに、涼花様もフローリアさんもEくらいのサイズはあると思います。

 私と比べると、天と地程の差です。


「しかし、こうして並ぶと大きさが分かるよね……。リリエラちゃんもシェリルちゃんもソーニャちゃんも、大きくて羨ましい……」

「これは、ただの脂肪」

「くっ……これが持つものの余裕か……。でもこんなに粒揃いな一年のみんなは恋人とか好きな人はいないの?」

「それでしたら、リリエラ様が……」


「ちょっと、セフィー!?」

「えっ、誰、誰?誰が好きなの!?」


 セラフィー様の暴露にミア様が食い付かれました。


「……ええと……ルーク様です……」

「ああ……それは競争率高いわね……」

「やっぱり、そうなのですかっ!?」


 ミア様の魔の手から解放されたフローリアさんの台詞にリリエラ様が驚きます。


「ええ。寮母仲間の間では大人気なのよ、ルーク様。まだ婚約者もいらっしゃらないと聞くし、尚更ね」

「そ、そうですよね……。年の離れた私のような小娘なんて……」

「あ~あ、フローリアさん、そういう現実を突きつけるのは可哀想だよ……」

「だ、大丈夫ですよ、リリエラ様!リリエラ様は妹のシエラ様と親友なのですから、紹介していただければ良いのです!わ、私も今度シエラ様にお願いしてみますから!」

「ほ、本当……?」


 こくこくと頷き、必死にフォローをするシェリル様。

 

 その光景を横目にしていると、今度は私に皆様の焦点が当たりました。


「エルーちゃんも、可愛いよね……」

「いえ、私は皆様のように大きくもないですし……」

「でも、形が綺麗だし……羨ましい……」

「エルーは、好きな人いないの?」

「い、いえ……わ、私は……」


 迷っているとリリエラ様から追撃が来ました。


「エルーシアさんは、シエラさんととても仲が良いですよね。ま、まさか……シエラさんだったり?」


 その追撃の言葉に、私はソラ様のことを思い出して顔が熱くなってしまいました。


「ま、まさか本当に……!?す、すみません私、てっきり冗談のつもりで言ったのですが……」

「は、はい……お慕いしております……」

「こ、これはなんとまぁ……。なるほど、仲が良いだけではなかったのですね……」

「そのお話、詳しく教えていただけませんかっ!神様と大聖女様の百合を見て感化されたお弟子様とメイド様……これは筆が捗ります……」


 その後、私は何故か事情を(ソラ様がシエラ様だと)知っているはずのシェリル様に根掘り葉掘りと聞かれるのでした……。

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