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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第960話 略奪

「ララ様、ララ様っ!!」

「貸しなさい」

「あっ……」


 血を吐いていたララちゃんを、抱えていたルージュちゃんから無理矢理奪う。

 鑑定を行うと、やはり毒……それも、()()()()()()()だった。


「私の恩人に何をする気っ!?」

「解毒剤だ、飲めるかい?」


 流石にルージュちゃんでも僕だとは見抜けなかったか……。

 僕が女装してたら見分けられるのに、男装してるだけで途端に分からなくなるなんて、悲しくなってくる。


「ちょっと、話を……」

「ルージュ、いい……」

「ララ様ッ!」

「どうせ……死ぬなら……殺されても変わらない」


 既に無詠唱でヒールをかけているから、死ぬことはないのだけれど。


「僕が関わる以上、君は死なせないよ」

「ぽかぽか……あなたの魔力、綺麗……とても大きな虹みたい……」


 僕に触れたせいで、ハイエルフのスキル『魔力視』の目にも僕の馬鹿でかい魔力量が見えてしまったようだ。

 幸いなことに僕が光属性だけではなくなったことで、僕が聖女ではないと勘違いできる点だ。

 魔力視は属性を色で見分けることができると聞いているし、僕が全属性使いになったこともまだそれほど知られていない。


 錠剤は毒を治す効果なんてなく、ただ僕が常備している頭痛薬だが、それを飲ませたタイミングで魔法陣を背中に小さく展開する。

 服の中で魔方陣を展開すれば、魔法陣の光も周囲からは見えない。


 発動したのは、状態異常回復(キュア)の魔法。

 流石にベノム程の危険性はないが、今のララちゃんのレベルだと学園二年生でまだカンストでもないからあまり体力も多くなく危険なので、治すことにした。

 いつもなら魔水晶に触れさせて鑑定を行いながら患者の状態をチェックするのだが、スキル『鑑定』のお陰で脳内で鑑定と唱えるだけでステータスを見れるのが便利すぎる。


 険しかった顔と呼吸がやがて穏やかになると、あたかも薬で治したかのような状況の出来上がりだ。


「マリーナ、介抱を」

「畏まりました」

「っ、恩人を助けていただき、ありがとうございますわ……」

「礼には及ばない。それとずっと気を張っているみたいだから先に伝えておくよ」


 僕はこそりと誰にも聞こえないようにルージュちゃんに耳打ちをする。

 ルージュちゃんは目を見開くと、体を預けてくる。


「やはり、あなたでしたのね……」

「安心しておやすみ」


 ルージュちゃんも疲れて倒れたところを支える。


<涼花さん、マヤさん、聞こえる?>

<これはまさか、加護の念話か?>

<うん。ちょっとこっちに来れる?>


 大分遠くにいたようで、悲鳴が聞こえてからこちらに近づいてはいたらしい。


<涼花さんは僕の右側にいる執事を捕まえて。妹に毒を盛った疑いがある>

<承知した>

<マヤさんは僕のところに来て>

<分かったわ>


 妻たちには僕の加護が及ぶから、いつでも内緒話がし放題。

 天使になってから与えられた技能がありすぎて使いこなせていなかったけれど、こういう時こそ使えるものは何でも使うべきだろう。


「おい、お前!私の婚約者を誑かしたのは貴様だな!?」


 フィリップ君、この期に及んでまだルージュちゃんが自分の婚約者だとか言い張るのか……。


「婚約者、ね……。それは横に付き添っているご令嬢のことを言っているのかい?」


 割と僕にもブーメランが返ってきているような気がするけど、婚約者とダンスにも誘わないで婚約者を名乗るなんて、恥ずかしい事を言っている自覚がないのだろうか?

 周りがその事を陰口で指摘すると、顔が段々と赤く腫れてくる。


「っ……!」

「あ、あの……そこの素敵な殿方!私はエメラルド・マクリミアンと申しますわ」


 エメラルド嬢に変装したペリドット嬢が僕の腕にすり寄ってきた。


「お、おいエメラルド!何その男に挨拶して……」

「私、見てしまったんです……!ララ王女様がお倒れになる前に飲んでいらしたグラスが、ルージュ子爵令嬢がララ様とわざわざ交換したところを……!!」

「な、なんだと!?」


 この子、変わり身が早いばかりか、変な機転の利かせ方をするな。

 ルージュちゃんが疑われれば、フィリップ君の立場も危うくなることくらい普通に考えれば分かるはずなのに。

 つまりこの子は初めからフィリップ君なんてどうでもよかったのだろう。

 他人のものを奪って満足する略奪欲の塊、まるで僕の姉を見ているかのようだ。


 ざわざわとありもしない噂が広がっていく。

 こうやって僕の妹を傷つけていったのか。


「へぇ、詳しく聞かせてよ……」


 僕は今、きちんと殺気を押さえられているだろうか?

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