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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第953話 浮気

「どうだった?」

「こちらです」


 な、長いな……。

 何冊あるんだこの書類……。


「忍ちゃんがこの手の()()を書くなんて珍しいね」


 専属メイドが日記を付けるのに対し、聖影や聖女親衛隊は報告書をよく書く。

 報告するのが僕だけとは限らずたとえば予算に関する報告なら執務室が見ることも多いので、ある程度は事実だけを列挙するように教育されている。


 だから一人の人間に対して調査報告書なんてあってもA4サイズに2、3ページくらいのもので、あまりにも長い報告書を書くと「日記」などと揶揄されるらしい。


「これが今のカエルム様に必要なものですので。お礼は是非乱暴俺様無責任おちん……」

「そんなオプションはないから、お賃金で我慢しなさい」

「そんな、無許可おちんぎんで私の金袋をタプタプにするつもりですかっ……!」


 擬音がおかしいのよ……。

 そもそもまだ学園卒業してないんだから、駄目に決まってるでしょ。


「処女は卒業しましたのに……」

「前にも約束したでしょう?若いときに生むと大変なことも多いんだよ。卒業するまではお金で我慢しなさい」

「子種貯金……ごくり」


 そんな貯金はないので、無視して書類に目を落とす。


「フィリップ・クロムウェル伯爵令息……えっ、ルージュちゃん、婚約者が居たのっ!?」

「はい。騎士学校の成績も良くなく、ルージュ様に劣等感を抱いているようです。すがれたのは生まれた伯爵位という地位だけのようです」

「僕、紹介されたことないんだけど……」

「ちょうどカエルム様が邪神討伐に向かわれた後に婚約が決まったようです。シュライヒ公爵もクロムウェル伯爵も王命ですから逆らえなかったのではなかったのかと」

「王命って、ソフィア女王の指示ってこと?」

「はい。次期公爵家の一員になるのであれば、このくらいの男は制御してみなさいということのようです」


 まさかソフィアさん、僕がいないときを狙って婚約を取り付けた……?


 クロムウェル伯爵自体に後ろ暗いことはないようだが、末っ子で甘やかされて育ったせいか、令息がドラ息子になってしまったらしい。

 対してルージュちゃんは聖女学園で成績トップ、なおかつ次期聖徒会長。

 優秀だからこそ社交界で比較されてきたようで、ルージュちゃんは僕と会ったことや学園のことなど話題に困らないが、フィリップ君は兄弟の方が優秀で本人は家柄くらいしか褒められることがなかった。

 でも逆にそればかり褒められていたせいで、彼自身が生まれた爵位こそが全てである爵位至上主義の価値観を根付かせてしまったらしい。

 次のページに進むと、更に恐ろしいことが書いてあった。


「は……?浮気……?」

「体の関係もあるみたいです。相手はエメラルド・マクリミアン。マクリミアン子爵家の次女のようです」


 頭痛くなってきた……。


「制御しろって、そもそも浮気するような人は論外だろう。お義父さんもソフィアさんもなに考えてるんだ?」


 相手の落ち度まで泥を被る必要はないはずだ。


「認識の相違がありそうですね」

「……呑気にパーティーの準備なんてしている場合じゃなかった。今すぐ調べよう。忍ちゃん、手の空いてる聖影を集めてくれ」

「御意」

「僕の義妹を出汁にしたツケ、払ってもらおうか……」

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