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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話253 見合い

【ララ・ゼクス・ハインリヒ視点】

「父も常々語っているが、私の父上は南部の民を魔法で救った英雄の一族である。その功績で他国の侯爵家の母上を娶ったのだ。私は第二子だが、兄も弟にも乗馬試験では勝り……」


 緑溢れるガゼボの下、身振り手振りで多弁する男に付き合わされる女の図。

 腐っても貴族、顔は悪くないかもしれないが、如何せん一方的に話しすぎる。

 こういう男ほど器も小さく、妻に前に出られると怒鳴ったりするのだろう。


「お見合いの意図。あなた分かってる?」

「そりゃあ、簡単な話だ!王家は姫様に次期王を産むための家柄を求めておられる。だから私のような高貴な血筋が必要というわけだろう?」

「ぶっぶー、不正解」


 人差し指を重ね合わせてバツの字を作る。


「なっ!?」


 そもそもこんな自己中心的な男はお断りだけれど、この男は貴族としての回答だとしても考えが足りていない。

 解説するのも面倒で、思わずどでかい溜め息をつく。


「モーレス、答えを」

「はい。お嬢様に嫁ぐということは、王家との繋がりを周囲に示す意味も大きいですが、そうしたいのであれば、他国のお相手の方がより魅力的で、わざわざ自国で選ぶメリットはありません。ですからあなた様は別のベクトルでご自身が『他国の貴族を娶るより優れていること』をご高説いただく必要がございました。先ほどあなた様が仰有っていたように、戦争もなく資源も充実した今、他国から娶るにはそれ相応の『御本人』の功績が必要です」

「そーそー。坊や、パパやママの自慢ナシで、自分の功績、言えるかな????」

「っ……!!」


 できるわけがない。

 彼はまだ何も成していないのだから。

 学園の成績も良くなければ、領地を納めているわけでもない、ただのボンボンの御坊っちゃま。


「お見合いの場は、おうち自慢大会じゃないの。おわかり?」

「くっ、これだから脳筋の冒険者は……!」

「冒険者は聖女様も認めた職業。侮辱。お帰りいただいて」

「御意」

「お、おいやめろ!」




「ら~ら~ちゃん!」

「ソフィア姉……」


 やっと訪れた平穏を堪能するべく『聖茶』に口をつけようとしたとき、美人陛下が後ろからちょっかいをかけてきた。

 喜怒哀楽が麻痺していて助かったというべきか。

 他の人だったら驚いて茶を溢しているところだ。


「またひどく振ったわねぇ」

「そう思うなら、もっとまともな縁談を纏めるべき」

「私が持ってきたモノじゃないわ。ゼクス家が勝手に纏めた縁談よ」


 道理でマトモじゃないわけだ。


「いっそ、産まれてくる子達に引き継いだら良いのに。ぶーぶー」

「駄目よ。100年で交代する、そう言うしきたりよ。大掃除はしても、良心な王侯貴族を裏切る真似はできないわ」

「むぅむぅ……」

「この際学園とかでもいいわ。誰か気になる子とかいないの?」

「んーんー……いなかっ()わけじゃない。けどけど……」

「えっ、誰々!?もぉっ、そんな子がいるなら先に言いなさいよぉっ♪」


 コイバナに花を咲かせる女王陛下、推せる。


「いいの?お家も功績も最強。聖女って言うんだけど……」

「あ、あの人は……!私の妹まで誑かして……!!」


 一瞬で怒りに変わる。

 喜怒哀楽激しくて疲れないのだろうか。


「第一、それじゃあ嫁ぐことになるじゃない!却下よ」

「むぅむぅ……」


 とはいえ本気にはしていない。

 少し気になる存在だというのは事実だが、あくまでもこの話題を終わらせるためのものでしかない。


「ソフィア陛下!至急お越しを!」

「何よ、可愛い妹との……」

「サンドラ陛下が産気づかれました!」

「っ、今いくわっ!!」


 そしてその話も緊急事態で、流れてしまった。

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