第931話 加護
光る小人族のマリエッタちゃん。
「わっ、わわわっ、なんですかこれぇっ!?」
「ソラ様の加護がついていらっしゃいますね……」
「えっ」
僕が加護を与えたってこと?
「でもマリエッタちゃんになら、加護をあげてもいいって思えるかも」
「あっ、ありがとうございますっ!」
溌剌なさまを見て、まるで後方腕組み、父親のごとくにっこりと頷く。
「マリちゃん先生、ソラ様より年上」
「え、ええっ……!?」
ソーニャさんがそう教えてくれた。
むむ、小人族だからと年下と考えるのはおかしな話か。
でもこんなにキュートでプリティーな子が僕よりずっと先輩で年上だなんて信じられないよ。
それもこれも僕が
「それに覚えていらっしゃらないかもしれませんが、一番の恩師と仰っていらっしゃいましたよ」
その上先生なのか……属性が多すぎない?
いや、女装聖女の僕が言う資格ないか……。
それより僕、学校の先生と禁断の恋してたの?
いくら聖女が最高権力だからって、それを笠にしてちゃだめでしょ……。
「ソラ様、それは今更でございます……」
心読まないでよっ!
なんというか……こんな小さな小人族を妻にしてるのだってロリコンって罵られてもおかしくないのに、嬉々として奥さんに選ぶような性格だったっけ、僕って?
記憶がないとかいう以前に、失っている記憶の中の僕が今の僕と違いすぎて、皆さんが言っている僕は実は他人が憑依した僕だったんじゃないかと思うほどだ。
少なくとも今の僕なら妹にはしても妻にはしない。
……加護ならいくらでもあげちゃうけど。
「マリエッタ先生!」
「はっ、はいぃっ!?」
僕が誤魔化してそう呼ぶと、マリエッタ先生は急に緊張したようにビックリして背筋を伸ばした。
「抱っこしてもいいですか!?」
「……もうしてるじゃないですかっ!?」
「頬擦りしてもいいですか!?」
「もうっ、好きにしてくださぁいっ……」
向こうの方が先に折れてくれたようだ。
「んふふ、うふふ、幸せ……」
楽園はここにあったのか。
頭を撫でるとふにふにしてて、頬を触るともちもちしている。
身体のどこを触っても癒されるなんて、まるでそれこそ聖女様そのものだろう。
性別すら偽りの僕なんかより全然聖女してるよ。
「ふんふんふんふふーん♪」
各部屋にお風呂完備なんて、流石は最高権力の住む家というべきか。
奏家の中でヒエラルキー最下位だった僕にとって、他の人が全員入り終わるまで待つのが普通なのに、それを気にせずお風呂に入れるなんてなんだか少し悪いことでもしているような気分になる。
でもこれは夢かもしれないし、せっかくならば楽しまないと損だ。
そもそも天使にお風呂など不要かもしれないが、日本に生まれたからには入らないと落ち着かないところはあるよね。
「ソラ様、失礼します」
「え゛っ……?」
ガラガラと扉が開かれると、そこにはタオルも何も身に付けていないエルーちゃんの姿があった。




