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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第928話 普通

 ずらりと並ぶ女性ものの服達。

 姉に着替えさせられたあの時を思い出すが、あの頃の服装はまだ女児みたいな服装だっただけに問題なかったのだ。

 でも今並べられているのは少しラフなドレスのようなもの。


「えっと、どうして女装しないといけないのかな?」

「それがソラ様の『普通』でございますから」


 どんな普通だよ、おかしいでしょ。

 この異常な光景に慣れろってこと?


「え、何?」


 エルーちゃんが僕の目の前で立ち止まると、僕の着ていた可愛らしいパジャマに手を掛けた。


「お着替えをお手伝いいたします」

「ちょっ、一人でできるから……!」

「っ……し、失礼いたしました……」


 さすがに妻とはいえ他人に脱がされるのは恥ずかしいからと断ると、エルーちゃんはしょんぼりとしていた。

 コミュニケーションの取り方間違えたかな?

 いやでも、記憶を失う前の僕でも流石にそんな恥ずかしいことしていないはず。




「ソラちゃん!」

「ええと、はじめまして……みなさん」

「っ……!!」


 僕の言葉に顔が強ばる大人のお姉さん二人と、赤ちゃん。

 これが僕以外の聖女。

 彼女達も僕と同じ世界から来た人なんだそうだ。

 でも嘘をついて誤魔化すわけにもいかない。


 この世界に似たゲームをしていた記憶はある。

 だからきっと僕は、この異世界に来てからの記憶が欠如しているのだと思う。


「そんな、絶対に成功するって言ったじゃないっ!」

『…………』

「「……」」


 僕は天使になったらしく、その代償に記憶が消えたのだと思っていた。


「エリス、答えなさい。あなたがいながら、どうしてこんなことに……!」

「原因不明です。人の記憶分野に関してはまだ分からないことも多く……」

「シルヴィには聞いていないわ。私は親友として、問いただす役目があるわ」


 でも、みんなはどうやら記憶をなくさずに僕を天使にしたかったらしい。

 でもこの世界の記憶はなくても、前世の記憶は残っているのだから十分すごいと思うんだけどな……。


「あの、私のことなんかでそんなに言い合わなくても……」


 僕にとってははじめましてだけど、こんなにも皆さんが僕のことを案じてくれる。

 それだけで胸がいっぱいになっていた。


『メルヴィナ、原因分かるかしら?』

「し、調べてみます。……」

『メルヴィナ?』

「……そ、そんな……まさか!?」


 膝カックンでもされたのかと思うくらいの勢いで膝をついて立ち尽くしたメルヴィナお姉ちゃん。


「ソラ様の記憶はすべて残っております」

「へ?」


 そうなの?


「じゃあ、どうしてまだ記憶が……?」

「わ、わたくしのせいでございます!わたくしの……!」

「どういうことか、説明願え……」

「かくなる上は……首をかっ切って死にます!」

「ちょっ、説明する前に死なないでよっ!」

『いや、あなた天使なのだから死ねないでしょう……』

「不覚……この業を背負って生きろと、そう仰有るのですね……」


 なんか武士みたいな口調になってない?


『罪を認めるのなら、お話しなさい』

「大天使の一角を担い、私の能力は記憶を司るまでになりました。その力で確実にソラ様の記憶を守り通したかったのです。特にこちらの世界にいらしてからの、ソラ様御自身が幸せと定義した部分の記憶は確実に覚えていられるように。私はその……鍵を掛けすぎたのです」


 つまり、僕の記憶がないのは僕の記憶を保管している場所を強固に閉めすぎて、もはや誰からも開けられなくなっちゃったってこと……?

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