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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第924話 辞表

「エリス様、ソラ様の神格化、エルーシア様も一緒に執り行うのですよね?」

「……?」

『メルヴィナ、あなたまさか……』

「私もお力になれないでしょうか?」

「メルヴィナおねぇちゃん?」


 僕の声にきゅっと何かを抑えるように指を握っていた。


「私も元天使としての魂があるのですよね?」

『ええ、そうよ』

「メルヴィナ様、いけませんっ!あなた様まで業を背負う必要は、どこにも……」

「いいえ、いいえ。むしろわたくしは残りの余生、ソラ様とエルーシア様のおふたりが紡ぐお伽噺を傍らで見られればそれでいいのです」


 エルーちゃんがメルヴィナお姉ちゃんの手を取ると、メルヴィナお姉ちゃんは捕まれた手を胸元に置いて落ち着かせていた。


『まあ天使エミュリアの生まれ変わりであるあなたを天使にするくらいなら、そこまで神力は使わないわ。エルーと同じ『覚醒の雫』を作る必要はあるけれど……』

「メルヴィナおねぇちゃん、てんしになるってことは、えいえんのいのちをいきなくちゃいけなくなるんだよ?」


 僕は覚悟の上だから問題ないけど、それを知らずに天使になることは認められない。

 後で知らなかったですで済む次元の話ではないからだ。


「おふたりを一生見ていられるのでしょう?そんなのご褒美ではございませんか!」

「でも、しゅらいひこうしゃくけはどうするんですか?」


 僕のその言葉に、待っていましたとばかりに、メルヴィナお姉ちゃんはアイテム袋から書類を取り出した。


「シュライヒ公爵家からの辞表です。ふふ、私、辞めてきちゃいました♪」

「えっ、ええっ!?」


 シュライヒ家はメルヴィナお姉ちゃんにとって、初めてメイドとしてまともに受け入れられた貴族家であった。

 今となっては彼女は天使エミュリアの『気色(けしき)』を使って公爵家に邪な考えを持つものを炙り出したりと活躍の幅を広げているけど、以前はこの力を全くコントロールできずに他人の心を読むこと自体に主人が嫌悪感を抱いたり、他の使用人からの嫌悪感で嫌がらせが続いたりと散々な人生だったと聞いている。

 だからメルヴィナお姉ちゃんもシュライヒ公爵家に恩義は感じているし、辞めるなんてことを考えるなんて思っていなかった。


「旦那様と奥様からもソラ様をお支えするようによく言われております。その……雇っていただけると助かるのですが……」


 僕のいないところで、みんな勝手だよ……。


「こうきゅうのしようにんぶそくはいぜんからもんだいになってましたからね」

「ツンデレですね」

「ツンデレだ」


 うるさいよっ!

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