第917話 神力
羽がひとつ増え、天使の輪の位が上がったかのように王冠の形をしていた。
神と言い伝えられていなければ、今の僕はただの化け物なのかもしれない。
僕は自分のステータスを見て驚くことがひとつだけあった。
それは『全属性魔法』というその表記。
多属性持ちは基本的に列挙の形を取るのだが、その例外にあたる存在がいることは僕は既に知っていた。
神獣・鳳凰や聖獣・聖霊女王シュネーヴァイス、それにセフィーが持つ『七色魔法』だ。
無色以外の七色の魔法は『鑑定』や魔水晶によるステータス上では『七色魔法』と表記される。
これは先ほど種族やジョブの分類をエリス様が定義付けていると示唆したように、おそらくエリス様が何らかの基準でそう付けているはず。
でもセフィーはもちろん人種族全員が使えるはずである無属性も使えるから、この世界にあるはずの全ての属性を使えることになるはずだった。
だから普通省略表記があるのなら、それは『全属性魔法』でないとおかしいはずなのに、敢えてそう書かれなかったのにはワケがあるはずだと僕は思った。
僕達人種族が操ることができない、むしろ魂が拒否反応を示して記憶が消えるほどの作用を及ぼす神の力、神力。
そしてそれを操ることができるうえに、神力さえあればどれだけ欠けていても復活できるという神体といわれる身体。
その二つの事柄は『神』属性の魔力という存在を気付かせるには十分だった。
そして今、特別な神体を取り戻して完全体になった現人女神エリス様をこの身に憑依させて、その意味がようやく分かった。
今の僕は神属性の魔法が使え、そしてこの世界のすべての属性を操ることができる。
つまりは『神属性の魔力』こそ、『神力』の正体だったのだ。
「『『『<――七魔覚醒――>』』』」
「力が……溢れてくる……」
「これなら……!」
そして鳳凰と七魔覚醒の重ねがけをすると、僕達の事実上のステータスは三倍の更に三倍、九倍になる。
『ダーク……』
「させないよ。――無刀・夢幻の舞、破魔――」
『くっ、目障りな女っ!!』
涼花さんの抜刀の速度が尋常じゃないくらいで、最早僕にも軌道が見えなかった。
<最後のピースが揃ったわ。あとは私に任せて>
エリス様がいなければ、僕はこの魔法を発動できなかった。
最後のピース、それは僕に神属性を与えることではない。
それならばわざわざ僕ではなくエリス様が自分の身体で魔法を放てば良かっただけだ。
エリス様が求めていたのは、発動に必要な魔力。
その魔力を上限突破して貯めておける魔蓄の指輪は、エレノアさんやクラフト研究室の皆さんがいなければこの世に存在しなかった。
僕は沢山の人々に支えられて今、ここにいる。
『魔法が効かないのなら、物理よ!闇の糸の前に刻まれなさい――』
姉が闇の糸を両手で操ると、僕を網目状に引き裂こうとした。
だが闇の糸達は僕の肌に触れることもなく消滅した。
『どうして……』
「『『『<馬鹿ね。そんなもの通用しないわよ>』』』」
自然に溢れ出てくる神属性の前には、どんな物理攻撃も魔法攻撃も通用しない。
エリス様に身を任せたところ、僕の代わりに喋ってくれたらしい。
「『『『<これで終わりよ、カナデ・セイラ。私が直接引導を渡してあげる――>』』』」




