閑話242 救世主
【柚季真桜視点】
「「森羅滅却!」」
「ゥオオオオォォオオオォオオ!」
「うげぇ、偽パパ強すぎゆ……」
それにこのしつこい牛男ストーカーも一撃一撃が強すんぎ!
ひたすら近接で魔法をろくに撃たせない戦法とか、頭使ってんの?
脳まで筋肉ミチミチに詰まってんじゃなかったの!?
予想していたとはいえママは動けてないし、今はセリーヌとカーラに守らせてるけど、守りながら戦うのは普通よりも大変なんよ。
もう、こんなの一歳児にやらせるなんて、労基に訴えんぞ!
うーん……誰に訴えればいい?
エリス?
聖女院?
「グォォォォ……」
「とりま、お前、ストーカー!」
パパも偽パパにつきっきりだし、何より人数が足りない。
「ワタシ、オマエ、マルツブシ!」
私が編み出した新魔法、光の鉄槌をくらえ!
ぐしゃあと音が鳴るかと思いきや、闇の魔力を纏って下から押し返してきた。
重力というものを知らんのか、この脳筋がっ!!
「真桜様っ!」
鎌が横から薙ぎ込んでくる。
ああ、そういや魔王も居たんだった。
モームリ!
いくら天才真桜ちゃんでもこんな処理メモリ足らん~~!!
「うらうらうらあっ!!」
やけくそになって魔王に光の光線を連発する。
徐々に後ろへ後退させているけど、やはりタイミングが合わずに防がれてしまっている。
ソラちゃんはどうやってあんなのを数秒で倒したの……?
「危ないっ!?」
あ、やべ。
私が魔王に集中していたのを知っていたかのように、その後ろに狂戦士の姿があった。
いくらカンストステータスでも、それを優に超える攻撃力1500の狂戦士の前には、私達の物理防御なんて紙に等しい。
は?
あろうことか、セリーヌが庇いに来ていた。
おい、ふざけんな……!
お前、セリーヌにそんなの当てたら、たとえ私が暴走してでも刺し違えてやる……!
でも私の想いも、急いで張ったバリアもタイミングが合わず一緒に破れた。
「セリーヌーーーーッ!!!」
「無の煉獄閃」
なんかかっこいい、▼
ねこみみぼうけんしゃが、あらわれた!▼
やけに布地面積が少ない冒険者は、そのお尻をこちらに見せつけながら狂戦士の腕を一瞬で切断した。
「助太刀」
「はわ……!」
「サンダーボルト!」
「はわわ……!」
「ソーニャさんにだけいいところは持って行かせませんよ!」
今にも婚約破棄されそうな悪役令嬢も出た!
雷魔法が偽パパに直撃し、エキサイティング!
「ウィンド・ライトニング・アロー!」
その時、巨大な風の槍が外から廊下に突き刺さった。
遠くから狙われたのが魔王であることに、射たれてから気が付いた。
「ちょおっ!?避けてえええっ!!」
お約束とばかりに遠くから風魔法で飛んできたサツキちゃん。
どうやら聖獣プシュケーの風魔法でマッハで駆けつけて来てくれた模様。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!
何がヤバイって?
風の抵抗力で、たわわな巨峰がぶるんぶるんしとりますがなっ!?
胸の靭帯切れたらどーすんの!
「桜ちゃん!」
「さ、皐お姉ちゃん……!」
もう大丈夫とママを抱き締めるサツキちゃん。
てぇてぇだけど、GとKが押しくら饅頭していて最強に見える……。
生まれ変わったらあそこでGKをしたい人生だった――
「もう大丈夫でしょう?さ、やるわよ!」
ママの懸念はサツキちゃんが死ぬんじゃないかってことだったみたい。
もう震えているだけのママじゃない。
『『『――現世の万物を覆滅せし神よ、今ひと度吾等に力を貸し与えたまえ――』』』
三人の最上級魔法を、くらいなっ!!
『『『――ホーリーデリート――』』』




