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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第897話 暗黒

「『『到着だ』』」

「本当に三十分で到達できるんですね……」


 本来は青銅のような古くさい大扉があったはずだが、何度も放った魔法のせいで扉は跡形もなくなっていた。


「中は見えないのですね」

「この奥に、邪神が……」

「『『準備はいいか?』』」

「勿論!」


 全員が頷くのを待ち、僕は先陣を切って歩みを進めた。

 扉の代わりにあった結界のような空間を抜けると、円形の部屋が現れる。

 趣味の悪い魔王の銅像やロウソクなどが東西南北に規則的に置かれており、いかにもゲームの最後のセーブポイントのような様相をしている。

 魔甲を取り付け、準備完了とばかりにぴょんぴょんと跳び跳ねる。


「『『青龍』』」

「なんじゃ?」

「『『頼みがある――』』」






「開けるで」

「よい、しょっと……」

「ふんぬ……っ!」


 玄武と朱雀が二人がかりで大きい両扉を押し出す。

 ゲームでは重量などわからなかったけれど、結構重いようだ。

 そういえばゲームではレベルやステータスが足りないとこの扉を開けられないというギミックがあったと思うけど、それはゲームの安全装置が働いていたわけではなく、単に扉を押し出すためのステータスが足りていないからだったようだ。

 何事も、実際に経験しないとわからないものだ。

 でもそう考えると邪神も割と良心的なのかもしれない。




 コツコツと、僕たちの歩みを進める音だけが聞こえてくる。




 暗い。




 ここってこんなに暗かったっけ?




灯火(ランプライト)




 静けさに耐えられなくなった朱雀が火魔法で灯りをつける。




「『女神に飼われた狛犬どもが、ぞろぞろと……』」

「「「ッ!?」」」


 もぞもぞと動く闇は、灯されても真っ黒な存在。

 それは黒いというより、暗いの方が正しい。

 すべての光を吸収してしまうが故に、強い光を当てても全く変わらずにその闇は真っ黒を表示する。

 まるで絵の具の黒色を現実世界にこぼしてしまった、そんな感じ。


 だけどその真っ黒は壁や床が朱雀の灯りで明るくなったので、そこにあることが僕たちにはわかる。

 そしてその真っ黒は、僕がゲームで見たことのない存在だった。


「『我輩の計画を悉く潰しおって……おのれ、赦さんぞ聖女共オオオオォォオオッッッッ!!!!』」


 闇の波動を飛ばしたところを凛ちゃんがライトニングバリアで凌ぐ。


「ぐぅぅっ……」

「凄まじい闇の気力だ……」

「覇気だけで息苦しいわい……」

「すべてを目覚めさせよ、七魔覚醒――」


 鳳凰の七魔覚醒でステータスを底上げすることで、僕たちの魔法の威力を一時的に三倍にした。


 そしてその影響で闇がある程度晴れ、黒く塗りつぶされている存在から輪郭だけが現れた。


 それは人間の成人女性の姿をしており、彼女こそが裸姿の女神エリス様であった。

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