第896話 反撃
「――何か、来る」
「『『リフレクトバリア』』」
僕の放った光の光線が向こうに飛んでいくと、一秒以内にどす黒い雷の光線が飛んで来る。
タイミングを合わせて二倍にして弾き返すと、クラッシュボアはもうお互いの光線によって消し飛んでいた。
「あの攻撃は、邪神の反撃か?」
「『『そうだ。邪神はダメージを食らうだけで反射で反撃を行う』』」
「つまり、今ので邪神はダメージを受けたと……?」
「『『ああ。道中の魔物を倒すついでに邪神にダメージを与えるには、入り口から入った方角と同じ向きを向く必要があるがな』』」
「わざわざ向きを選んだのはそういうことか……。ダメージを受けた時に反撃するのなら、今リフレクトバリアで反撃した分のダメージで再び反撃しないのかい?」
「『『それだと、もし私のように反撃を跳ね返せる相手には無限に跳ね返して勝ててしまうだろう』』」
「むしろ無限に跳ね返せるだけのタイミングを完璧に覚えて再現できるその脳がすごいと思うが……」
「流石歴代最高成績の首席……」
凛ちゃん、それ言えばいいと思ってるでしょ。
むしろ煽り文句にすら聞こえてくる。
こういうのはただの慣れだから……。
「『『だから一度反撃した後、10秒ほど反撃をしない時間を設けたのだろう』』」
「だが攻撃をされているのなら、向こうからこちらに来たりはしないのか?」
「『『それはない。ボス部屋にいる限り邪神は安全だからな』』」
「それは、一体どういう理屈で?」
凛ちゃんも知らなかったのか。
「『『魔力が一万を切った時に、邪神は場外からの攻撃を一切受け付けなくなる』』」
「それにお父さん、多分迷路のルート覚えてないと思うよ。だっていつも転移してくるし」
ええ……作った本人が覚えていないなんて、そんなことある……?
でも本来変えられるはずのものを変えなかったんだし、邪神にとってはそれほど興味がなさそうに感じる。
「なるほど、同じ部屋に来たら攻撃を食らうようになるから、向こうからわざわざこちらの部屋に来ることはない、と……」
それでもデメリットの方が多く――例えば二万以上魔力があればこちらに来ることも考えるだろうが、先ほどから一向に来る気配がないので、恐らく二万を切っているのだろう。
ユグドラシルの根の効果は絶大、僕もこれほどとは思わなかった。
「「『リフレクション・フルバースト、リフレクトバリア。リフレクション・フルバースト、リフレクトバリア』」」
「蹂躙だな……」
「『『んくっ、んくっ……』』」
こうして僕は出口に到達するまで、ひたすら攻撃と反射を繰り返しつつ、秘薬を飲んでその魔力を回復していった。




