閑話240 乱反射
【下野皐視点】
「ククク……防戦一方ですか、聖女サツキ!」
「うるさいわね!私は戦闘タイプじゃないのよ!」
あのインキュバス、ペチャクチャしゃべってばっかでまともに戦闘できないのね。
次席の優等生リリエラちゃんに相手をしてもらってるけど、彼女一人で対処されててむしろ不憫に思えるわ。
「聖女院の職員にはあなたのお得意の魔法も通用しないものね」
「言わせておけば……!」
聖域の外までには催淫の効果は及ばないし、ここで対応するしかない。
「サツキ様、ご無事ですか!」
「サツキの嬢ちゃんに、リリエラか?」
「シルク君!それにマルクス!私は大丈夫。それよりあなた、真桜ちゃんはどうしたの?」
「姫様にこっちの支援を頼まれてんだよ。さっさと片付けるぞ!」
「魔王様!」
放たれたのは、漆黒の爆散瘴気。
マルクスが慎重に跳ね返すものの、あれを食らったらまずい。
「チィッ……これじゃあ近付けねぇ……」
「クク……ジリ貧なのはどちらでしょうネェ……!」
「ホーリーシールド!」
液体だけ跳ね返すも、解除すればその液体がこちらにこぼれてくる。
宙に浮けない私たちにとって、私の部屋の中にいる限りジリ貧なのはインキュバスの言う通り。
「嬢ちゃん、どうする?」
「嬢ちゃんって歳でもないわよ。部屋の向こうに押し返せる?」
「……ああ、なるほどな」
「サツキ様、例の鍵です!」
「シルク君、ありがと!愛してるわ!」
「……」
照れてるシルクきゅんの顔のお陰で、こんな状況でも頑張れるわ!
「サポートしますわ、ライトニング・エンチャント!」
「うおらああっ、シールド・スタンプゥウウウッッ!!!!」
雷を纏ったマルクスは俊足の足を手に入れ、大盾を素早く動かすと、その風圧で魔王とインキュバスは奥に押し出される。
直撃しなくても、それでいい。
「今よ!」
シルクきゅんから受け取ったスマホのような長方形のカードは、パスキー。
私が前世で最後に桜ちゃんのストーカーにしてやられてから、自室の防犯対策を怠ると思う?
ここは私のテリトリー、シルクきゅんとエレノアちゃんで作り上げたからくり部屋よ!
「……!?」
「な、なんだこれは!?」
突如部屋が大きなしきりで二分割される。
私たちのいる方は出入りでき、向こうは監獄。
「ダークネス・ライトニング!」
「……!」
魔王とインキュバスは魔法や物理攻撃でここから出ようとしてみるけれど、それは叶わない。
「この壁は魔力や魔法を100パーセント弾き返す特製のミスリルミラー。壁に傷をつけるのも、すり抜けることすらできないわよ」
「すげぇ……!いつのまにこんな仕掛けを……」
「おのれ聖女サツキィ……謀ったな!?」
「そしてミスリルミラーでできた唯一の穴から光魔法を通し続ければ、一生乱反射する光魔法に淘汰されて消えるのよ」
魔王が聖女を狙うのなら、最初から罠を張っておくのが私なりの冴えたやり方よ!
「永遠に眠りなさい、ディバインレーザー!!」




