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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第889話 胸枕

「この火山、中に入ると比較的弱いのは、何故なんだ……?」

「確かに厄介かと思っていたが、あののろまの玄武でも避けられているのはおかしいな……」

「自分、煽っとんのか……?だいたい、俊敏で言ぇや教皇ちゃんだって変わらんやろ」

「玄武……貴様……」


 ステータス的にはこの中で最遅の300を持つ二人だけど、それでも避けられるくらいのゆっくりさだ。


「普通は避けられないですよ」

「もしかして、ソラちゃんが何かしてくれているのかい?」

「いえ、私は何もしていないですよ」


 その時、端末に付けていたアラームがピピピと鳴った。


「ちょうど夜ですね。休憩しながら話しましょうか」




 神獣は寝なくてもパフォーマンスに問題はないらしい。

 正確には寝溜めみたいなことができるらしく、食事も必要ないので基本的に誰もいないときは寝ているのだそうだ。

 人間的には昨日の寝溜めは有効だけど、彼らの場合数年前に沢山寝ても数万年前に沢山寝ても寝溜めに換算されるらしいので、実質数万年の累計寝溜めとなり、ほぼ寝なくても数年は寝なくてもいいという。

 だから休憩を取る必要があるのは主に僕たち人間だけだ。


 ブルーシートの上にテーブルとベッドを置いて休憩する。

 この休憩もアイテムボックスによるところが大きい。


「先程の話ですが、まずは単純に鳳凰のバフ効果でしょうね。『七魔覚醒』はパーティーのステータスを三倍にする効果がありますから。邪神戦でも鳳凰のバフが要になってくるでしょう」

「だが三倍したとしても900、普段の私たちと同じ感覚になるわけだろう?正直、外の敵の方が反射神経も素早さも早かったように思えるが……」

「それこそが麒麟の効果ですよ」

「既にユグドラシルの根がこの洞窟の壁を包囲して、魔力を吸収しているんですね」


 長期戦になればなるだけ邪神から魔力を吸い取れる。

 魔物は魔力で動く生物だから、いわば電気のなくなった家具、人間で例えるなら飢餓してパフォーマンスが低下した状態だといえる。


「私たちはこれからユグドラシルの根の成長速度よりゆっくり進むだけです。ですから、こうやってまったりするのが吉ですよ」


 食べ終わったお皿を片付け、魔法で身体を綺麗にしてからベッドに腰掛ける。


「ふぅ……」

「やはり眷属憑依の疲労が大きいのではないか?」

「そうですね。感情に身を任せすぎました」


 この小さな体躯のように未熟な心。

 「そこがソラちゃんの魅力だ」なんて言いながらも膝枕に続いて、大きな胸の枕で包み込んでくれる涼花さん。

 僕の憧れでもあった人に、憧れの鍛えられた腕に包まれながら寝るなんて、転移する三年前の僕は想像していただろうか?


「涼花さん、重くないですか?」

「ふふ、台詞が乙女過ぎますよ、ソラ様」

「むしろ軽すぎるよ。もっと食べなさい」


 そういうつもりで言ったわけじゃないんだけどな……。


「だから安心してお休み、私のお姫様」

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