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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話238 二体目

下野(しもの)(さつき)視点】

「むむ……」

「こういう時は関数使えばいいのよ」

「ああ、そうでしたね。便利になったことはいいことですが、まだ慣れませんね」


 経理は表計算ソフトでデータ管理するようになり、報告書の部類も電子化するようになった。

 データベースの構築から諸々用意するのは大変だったけれど、集計や楽になるだけでなく、計算が必要なくなったと評判はいいらしい。

 特に経理関係の部隊には入力ミス(ヒューマンエラー)による金額の相違にすぐ気が付けることが

 聖女院の経理は数字の間違いに超敏感で、それは「聖女院のお財布は聖女のお財布」という思想があるから。

 もし支払い額や請求額を間違えてしまえば、聖女のお財布から余計に奪ってしまうことになる。

 強い言葉を使ってしまえば、聖女相手にお金泥棒しているようなものらしい。


「何言ってんのよ。私と同い年の癖に……んーーっ!」

「サツキ様、お疲れですか?」

「デスクワークだから、肩が凝って仕方ないのよ」


 そう言って伸びをすると、リリエラちゃんがジト目をしてくる。


「何よ、胸のせいだと言いたいの?」


 実際4キロくらいある気がするし、肩が凝るのは仕方ないのよ。


「いえ、サツキ様は魅力的すぎるのですから、魅了なさるのではないのでしたら、あまり気を抜かないでくださいませ」

「リリエラ、それは禁句です。ここは聖女院。聖女様が伸び伸びとストレスなく居られる場所でないといけません」

「す、すみませんでした……」

「まぁ婚約者を取られたくない嫉妬心は可愛いからいいけどね。でも仕事にまで持ってくるようなら、早く結婚して既成事実作っちゃいなさいよ」

「サ、サツキ様……!?」


 天気が曇りがかって来て、風が吹き荒れる。

 次の瞬間、パリンパリンと一斉に窓の強化ガラスが割れた。


「「ッ!?」」


 この現象、知らないけど知っている。

 ラスボスの魔王。


「まさか、魔王!?」


 外を確認すると、紫のマントが宙に浮いていた。

 そう、こういうときのために通話アプリがあるのよ。


『サクラちゃん、真桜ちゃん、聞こえる?』

『どったの?』

『魔王が来たわ』

『っ……!?』

『大丈夫よ。そっちには来させないから!ホーリーアロー!』

「サンダー・ボルト!」


 割れたガラス窓越しに放った先制攻撃はどうやら功を奏し、明らかにいいダメージが入ったようね。

 ステータスもゲームの時とは比べ物にならないくらい上がったし、ソラ君直伝の隙のない両杖スタイルなら、魔王には勝てるはずよ。


「サ、サツキ様!あ、あれ……」


 宙に浮くマントはやがてぼやける。

 直撃した魔王がゆらゆらとこちらに向かって来るときに、完全に重なっていて隠れていた何かが見えた。


「……う、うそでしょ?」

『ど、どうしたの?サツキお姉ちゃん?』

『サッちゃん、返事して!』


 それは、隠れる前と全く同じシルエットだった。


「魔王が……二体……!?」

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