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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第887話 相似

(かなで)星空(せいら)が……この下に居るんですか?」

「そうだよ」


 身震いが止まらない。

 下に向かわなきゃという覚悟はあるものの、身体が拒絶をしていて仕方がない。


「どうしたの?」

「まがいもののソラを作り、虐めるとは……」


 姉が生きていて、この世界に居る。

 しかも今度は幻覚などではなく、姉本人だということだ。

 何故なら姉を見たのが僕ではなく、幻覚の通用しないはずのアビスさんだからだ。

 不死王リッチの幻覚なら『最も感情を揺さぶられる相手』の幻影を見せるはずなので、僕以外が姉を見ることはあり得ない。

 玉藻前の変身なら、生きているこの世の人でないと化けれない。

 

 つまり、邪神が何らかの方法で、姉を復活させたということしか考えられないのだ。


「そこまでして虐めたいなんて、性格が終わってるわね」

「お姉ちゃんは僕を虐めるのを生き甲斐にしているからね」

「ソラ様……大丈夫ですか?」


 エルーちゃんが手をにぎにぎしてくれる。

 逃げたい気持ちは沢山あるけれど、でもこうして懸命に支えてくれる婚約者の前で弱音ばかり吐くわけにはいかない。


「しかし、ソラ様とそっくりですのに、女装していても『僕』なのですね」

「確かに、そこは違和感があったな」

「え、何か違う?」

「ソラ様は殿方ですから」

「は……?」




「ええっ、君は男の子だったの!?」


 この驚きも懐かしい光景だ。

 僕の立場的な問題もあってか、周りの皆はあまり驚かないんだよね……。

 いや、そもそも男に驚かれるのはおかしいんだよ、うん。


「アビスさん、そういうのは失礼なんですよっ!」

「何が?」

「くぅっ……」


 このなにも分からなそうな、無垢な顔……!


「何をやっとるんだ、お主達は……」

「止めないでよ、青龍。今大事な話をしてるんだから」

「ですがソラ様、手の震え、止まってますよ」

「あ、ほんとだ」


 下らない話をしていたら、恐怖が少し紛れてきた。


「へぇ、僕のオリジナルは女装したら『私』になるんだ。知らなかったよ」

「オリジナルって言うのやめてよ」

「じゃあ何て呼べばいい?大聖女?」

「普通にソラでいいよ」

「私もエルーで」

「涼花でいい」

「ソラ、エルー、涼花ね。分かった」

「……目を塞いでいると、本当にソラ様がお二人いらっしゃるかのように感じてしまいますね……」

「そっくりさんってレベルじゃねぇな」

「基本的にソラとほぼ同じ作りになってる筈だよ」

「確かに、お胸も小さいですし……」


 僕を見て言わないでよ。

 僕は「小さい」んじゃなくて、そもそも「ない」んだよ。


「背も低いわね。小さくてカワイイじゃないの」


 余計なお世話だよ、ユニコーン。


「では、耳も弱いのか?」

「ひゃぁっ……!?!?」


 涼花さんがアビスさんの耳元であの低い声を出すと、まるで僕みたいにその場で屈んで下半身を押さえつけていた。


「本当に弱かったのか、す、すまない……」

「…………つまり、合法的に両耳からソラ様のお声を聴きながら、ぼそぼそ……」

「……エルーちゃん、余計なことは考えないように」

「……はっ!?ど、どうして!?ソ、ソラ様はエスパーですか!?」


 婚約者でもないのに巻き込もうとしたでしょ、今。

 よく聞き取れなかったけど、もう三年一緒に居るんだから、ろくでもないこと考えているときくらい、さすがに気付くよ……。


「ソラちゃん、あまり喋っている暇はないようだ」


 辺りを見渡すと、地に天井に、様々な色の爬虫類が這っていた。

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