閑話24 次世代
【エリス視点】
「いらっしゃい、サクラ」
久しぶりに天庭に来た親友を歓迎する。
「久しぶりね、エリス」
「貴女が助かって本当に良かったわ……」
「ありがとう。私もソラちゃんには、本当に感謝しているわ……」
「ソラ君……」
その固有名詞を聞いて、私は顔が火照るのを感じた。
「どうしたの?いつもの妄想でもしたの?」
「……それよりももっともっと凄いことよ……」
「えっ!?まさか進展があったの!?ソラちゃん、私にはそんなこと一言も話してくれなかったのにっ……。そんな面白そうなこと、どうして教えてくれなかったのよっ!?」
相変わらず面白いことには目がない親友だ。
「騒がないの!お腹の子に響くわよ」
「はぐらかさないでっ!私だって間を取り持ったんだから、聞く権利くらいあるはずよね?」
照れ隠しは通用しなかったらしく、言及されてしまった。
「……ソラちゃんに、好きって……言われたの……」
「えっ!?まさかそんなに進んでたなんて……」
「……シルヴィと一緒にね」
「んん?どういうこと……?」
私はデートの日のことをサクラに話すことにした。
「なるほど……それはラブの好きというよりライクの好きよね」
「うぅ……でも、私はソラ君の口から私に好きって言って貰えて、幸せすぎて昇天しちゃったんだから……」
あれほどよいASMRはこの世になかった。
私はシルヴィと心が繋がっているから、シルヴィの昇天とあわせてそれはもう大変なことになっていた。
「まあ親友が順調そうで良かったわ」
「貴女もね。また話せて嬉しいわ……」
泣くまいと思っていたけど、駄目だった。
「今回のことで、皆に心配をかけちゃったわね……」
「たまにはいいわよ、そういうのも。改めて誕生日、おめでとう。これが私の分で、こちらがシルヴィの分ね」
「ありがとう。シルヴィのは、クッションかな。これは……?」
「普段着としても、お腹が膨らんできても着れるものよ」
「なるほど。ちょっと気が早い気がするけど、ありがたく使わせてもらうわね」
「ソラ君からも同じことを言われたわ……」
アドバイスを聞いておいてよかった。
「そういえば、リンにゲームを渡したわ」
「あら?結局渡すことにしたのね。凛ちゃん……確か元凶の子よね?」
「その言い方はリンに失礼よ。彼女も被害者なんだから……。それにどちらかというと演劇のヘルプを頼んだ方が元凶よ……。あの演劇がなければ、奏家の連中に目を付けられることもなかったんだから!」
「連中って……でもまぁそうかもね。それにしても、もう次世代かぁ……」
「まだ渡したばかりだから、来るのは大分先になるわよ」
地球とこの世界では時間の流れが違うからね。
サクラはお腹をさすりながら、自分の次世代を慈しむ。
「この子が生まれるのと、どっちが早いかしらね――」




