閑話235 恐妻家
【マリエッタ視点】
「ん~~っ♪」
王宮で美味しいおやつを食べます。
これは正当な報酬、いわばご褒美なのです。
「マリエッタ殿は本当に美味しそうに食べるな。姉上が惚れるのもよく分かる」
「そんなに欲しそうにしても、あげませんよ?」
「いや、そんなこと……まあいい」
度重なる王女の嫌がらせによって家庭教師もろくな人がせず、皇太子殿下の学園教育も散々なものでした。
私も聖寮院の院長として皆様に教えるだけでなく、こうしてお願いされれば家庭教師のようなこともするのです。
今回はソラ様のお願いで西の国の王宮の防衛をすることになりました。
そうです、国防です!
でもただここに居てお菓子を貪っていては太ってしまいますから、ついでにアール皇太子の皇太子教育の遅れを取り戻すべく家庭教師の真似事をすることになりました。
いくら沢山の婚約者に頼れるとはいえ、いつまでも政を婚約者任せにするわけにも参りませんからね。
「アール殿下もっ、大分分かるようになってきましたねっ!」
「最近は覚えることが多くて大変だがな……。正直、身体を動かしている方が性に合っている」
「脳筋ではソラ様に嫌われてしまいますよっ?」
「むっ……そう言われると、痛いな」
婚約者より姉貴分に嫌われるのが嫌だなんて、殿下は生粋のシスコンですね。
「失礼します殿下、お嬢様方がいらっしゃいました」
「通せ」
「かしこまりました」
「殿下、お疲れ様です」
五妃がいらっしゃいました。
「待てメイド、妃のために給仕を頼む」
「かしこまりました」
「フィストオオォォォッ!!」
「ぐぉっほぉぉっ!?」
スキラ二妃が急にメイドの腹にアッパーを食らわせると、ソラ様に突かれた時の忍ちゃんのような声が部屋に響き渡りました。
アグレッシブな二妃にはもう慣れましたが、急にメイドを殴るようなアグレッシブさではないはずです。
答え合わせをするように患グラスをかけると、メイドはあの四天王、玉藻前でした。
「あいにく聖女院と違って王宮の王妃専用メイドは給仕をしない。給仕専用メイドが行うのでな。これは貴様のようなネズミを見つけるための一時的な策だ、玉藻前」
「ぐっ、おのれ……」
メイドは使えないと悟った玉藻前は解除し目の前の誰かに変身しようとしました。
「ティファニー、メラニー!」
「「はいっ、『『氷獄』』!」」
しかし、そんな暇は与えません。
メラニー三妃の風とティファニー四妃の水の合成魔法で一瞬のうちに氷り付けにしてしまったのです。
「ちょっ、動けな……!?」
「よいっ、しょっと!」
「おい、そのハンマーで振り下ろすのはよしなさい!こら、やめ……!?」
「…………ていやっ!」
魔法で氷り付けにしたところを打ち合わせ通りに私が巨大ハンマーで叩き割ります。
ステータスカンスト同士の連携技で玉藻前は跡形もなくパリィンと大きな音を立てて粉々になってしまいました。
「私っ、必要なかったんじゃ……」
「う、うむ……まぁ、過剰戦力の方が気も楽だろう」
トドメは私が取りましたが、正直殴り足りなそうなスキラ二妃にでも任せれば終わっていた気もします。
「こんなつよつよ五妃に囲まれてっ、皇太子も今から尻に敷かれそうで大変ですねっ……」
「言うな……」
アール皇太子は多くを語らず、ただ遠い目をしていました。




