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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第878話 巨根

 翌朝、少し仮眠をとった後、早めに仮拠点を出る。


 昨日は光彩の(ブリリアンス・)万華鏡(カレイドスコープ)が残存していたためか、魔物が現れてもリスポーンキルされていたようだ。


「おはようございます」

「「「おはようございます」」」


 エリス様は力をほとんど使い果たして眠っている。

 今までエリス様が寝たことなんて一度もなかったし、神様は寝なくてもいい存在だと思っていた。

 そんな寝なくていいはずの女神様が眠っているのは、余程のことがないといけない。

 つまり乗っ取られた本体に神力をほとんど吸われ、魔力を回復するのにも時間がかかってしまっているらしい。


「本日から親衛隊は二手に別れて行動します。親衛隊の皆さんはここに残って、溢れ出る魔物達を退治し、外へ漏れ出さないようにしてください」

「「はっ!」」


 親衛隊のほとんどはここに残ることになる。

 邪神討伐のために火山に入る組は少数精鋭。

 僕、凛ちゃん、エルーちゃん、涼花隊長。

 それに死という概念がない神獣達だ。


「藤十郎副隊長、ここは任せましたよ」

「任されよ。だが、神獣様も全員行かれるのか?」

「いえ、麒麟もこちらに残します」

「どうしてだ?」

「麒麟はここに居るのが一番邪神に効果的だからです。麒麟」

「……」

「きーりーんーさーんー?」

「…………」


 ちょっと、無視は酷くない?


<……ハープちゃん>

<嫌だ>

<お願い>

<絶対に嫌>


 むっ、そんな頑固にならなくてもいいじゃん。


「眷属憑依」

<あ、こら!?>


 こうなったら、無理やりハープちゃんになってやる。


「『きりん……』」

「……!?」

「『きりん、おねがい……!』」


 実は眷属憑依は僕と眷属を足してちょうど半分した見た目がデフォルトだが、割合を調節できる。

 だからパーセンテージさえ調節すれば、僕の見た目のまま天使の羽や天使の輪を生やしたり、教皇龍そのものになったりできる。

 右腕だけムキムキにしたりもまぁできなくはないけど、流石に気持ち悪い見た目にはなる。

 今回は見た目も声もわざとハープちゃんに寄せて、少しあどけなさを演出して甘い声を出す。


「『きりん……?』」

「……ユグドラシルの根」


 うーん、現金な神獣だ。

 麒麟の角から伸びたものはやがて太くなっていき、根っこと呼ぶにはあまりにも太い、木の幹のようなものが地面に突き刺さった。

 そして角を適度な長さで切り離すと、麒麟は巨大な根っこに触れて地面に伸ばしていく。


<どうしてこんな屈辱を……>


 それは僕の台詞だよ。


「『ユグドラシルの根は周囲の敵から魔力を吸い取る麒麟の固有魔法だ。ここにあるだけで周囲の敵は魔力を吸いとられていき、その魔力と水さえあれば、根は更に伸びていく』」

「なるほど、では我々で水を与えればよろしいのですね」

「『テティスを置いていく。水はテティスとケイリーで与えよ。ユグドラシルに吸収された魔力は根を更に伸ばすか、触れて我々の魔力に還元するか選べるはずだ』」

「なるほど、魔物から魔力を吸収すればするほど根が伸び、根を伸ばせば伸ばすほど魔力吸収範囲が広がっていくと……」


 更に言うと根は地面や壁に埋まっているから、吸収されていることにも気づきにくい。

 魔物はこの辺りから沸くのでここで防衛戦をするだけで下に伸びていくし、更に下にいるであろう邪神にまで届けば、今度は魔物を召喚するための魔力消費量が割合で増えるため、一方的に不利だった盤面から、時間をかければかけるほどこちらが有利になってくる。


「まるで永久機関だな……」

「ソラ様が何としてでも麒麟様をお連れしたかった理由が良くわかりました」

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