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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第877話 光彩

「シルヴィ」

「はい。降神憑依――」


 同じ円柱型の消去魔法ならば光の最上級魔法、ホーリーデリートでいいじゃないかと思うかもしれないが、この魔境には光属性が通用しない魔物が沢山いる。

 ゲームなら聖獣を召喚して一緒に戦うか、光か闇なら相性が悪いにしてもどちらか一方は効くから神獣スフィンクスを手懐けて同行させるかしかない。


 他にも南の国(ソレイユ)の冒険者クラン『神樹』で特定の魔物の撃退依頼のチュートリアルとしてAランクの冒険者パーティーと組むサブクエストがあるんだけど、その依頼受注中はパーティーを組んだままなのでその状態で魔境に行く手がある。

 ゲームなら通用したかもしれないが、『冒険者後輩に魔物討伐のノウハウを教えようとしたらいつの間にか魔王越えて邪神討伐に行かされた』なんて、冒険者パーティーからしたらとんだ詐欺だし、そんなこと言われて付いていくわけがないだろう……。


 朝焼けの山頂に神獣が、円陣を作るように一堂に会する。


『――一度(ひとたび)我が身が暖を求むるとき、その身を(ほむら)に捧げ――』

『――二度(ふたたび)我が身の喉が渇けば、その身を水面に預け――』

『――三度(みたび)我が身が自然の恵みを求むれば、その身を土に還し――』

『――四度(よたび)我が身が灯りを求むるなら、その身は紫電となりて空を舞う――』


 火の神獣、朱雀。

 水の神獣、玄武。

 土の神獣、麒麟。

 雷の神獣、白虎。

 ひとり、またひとりと両手を会わせていくとどんどん魔法陣が展開されていく。


『――五度(いつたび)我が身が空に願えば、その身は烈風となりて吹き荒れ――』

『――六度(むたび)我が身が力を欲すれば、その身は心を無にし――』

『――七度(ななたび)我が身が癒しを望めば、その身は輝きを与え――』

『――八度(やたび)我が身が日陰に手を伸ばせば、その身は闇夜に包まるる――』


 風の神獣、ユニコーン。

 無の神獣、青龍。

 光の神獣、教皇龍。

 闇の神獣、スフィンクス。

 八つの色の魔法陣が重なりカラフルな万華鏡のような一つの魔法陣が出来上がる。


「『『全ての色彩はやがて歳を重ね時を重ね、豊かな虹の光となりて世界を(ただ)せ』』」


 そして全属性の神獣、鳳凰が手を合わせると、万華鏡の円形魔法陣の外周に(ひし)形と正方形の大枠で囲うように線が出来上がる。

 最後にエリス様を降ろしたシルヴィがパンと手を叩き、この魔法陣を火山を覆うくらいの超巨大にまで押し広げた。


「『『『『『『『『『『――光彩の(ブリリアンス・)万華鏡(カレイドスコープ)――』』』』』』』』』』」


 乱反射する光線……いや光の柱は何故か眩くなく、少し時間が過ぎれば色も形もまた新しいものへ変わるから、自転する万華鏡をただ覗いているかのような光景だけが僕達の視界を支配する。

 虹色のそれは、全属性魔法。

 どの魔物も、邪神でさえ何かしらの弱点属性はある。

 だからこそこの虹色魔法は、まるで戦場での原爆くらいの威力がある魔法兵器だった。


 発動したのは夕日が沈む頃だったが、邪神陣形に大打撃を与えたであろうこの魔法が治まる時には、朝日が上っていた。

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