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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第11章 落花流水
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閑話23 いのち

柚季(ゆうき)(さくら)視点】

「サクラ!!」


 病室にアレンが入ってくる。


「……ソラ様もいらしてたのですね」

「じゃあ、私はこれで。お二人とも、おめでとうございます」


「……二人とも?」


「ありがとね、ソラちゃん」


 私が再びお礼を言うと、彼は部屋を去っていった。


「サクラ、本当に良かった……」

「アレン、貴女にも謝らないといけないわね……」

「いいんだ。君が無事ならそれで」


 愛しのアレンにまた逢える。

 生きていて嬉しかったことの一つだ。


「ソラちゃんには一生頭が上がらなくなっちゃったわね……」

「そうだね。流石は神様に愛されたお方だ」


 いつものようにソラちゃん信仰をするアレン。


「ふふ、私もそろそろソラ教の教徒にならないと……かしら?」

「むしろまだ教徒じゃなかったことに驚きだよ」


 彼はそういうの嫌いそうだしね……。


「私も遠征先で貴重な体験をさせてもらったよ」

「迷宮にでも行ったの?」

「ソラ様から聞いたのかい?」

「これをもらったのよ。()()()()()()使()()()()()()()からあげるわ」


「なるほど、『ワープ陣』……。それなら訓練場から迷宮行きとして置かせて貰おうかな」


 ヒントを与えても気が付かないアレンに少し呆れる。


「ソラちゃんに、『今は()()()()()()()()()()んですから、尚更大事にしてください』って怒られちゃったわ……」

「ええと……私のことも心配されていたということかい?確かにサクラの身に何かあったら、それは私も悲しいが……」


 嬉しいことを言ってくれるが、欲しい反応はそうじゃない。

 珍しくカンの鈍い旦那にしびれを切らした私は、別の手段を取ることにした。


<サクラからの御告げコーナー!>


 突如始まったお告げに、姿勢を正すアレン。


<みんな、私の誕生日を祝ってくれて、ありがとう。ソラちゃんのおかげで、こうして生きて帰ってくることができたわ。私はとても幸せ者ね>


 アレンにウインクして、次の言葉を告げた。


<ソラちゃんには、とても怒られちゃったわ……。もう、私だけの命じゃないんだからって。私にはアレンと、このお腹に新しい命がいるんだからって……>


「ま、まさか……」


 目を見開くアレン。

 その顔が見たかったのよ。

 私の好きな、可愛い顔がね。


<これからもこの子共々、私たち親子をよろしくね――>




 お告げが終わると、嬉しそうなアレンの顔が見えた。


「しばらくは、お預けよ。我慢できる?()()……」

「……そっちこそ、()()……」


 下世話な会話が尊く感じるのも、死を彷徨ったからこそかもしれない。


「そうね、私が我慢できないかも……」

「……やけに素直だね?」


 おっかなびっくり聞いてくる。

 別に変なもの食べたわけじゃないわよ……。


「そうね。文字通り『寂しすぎて死にそう』だったんだから!埋め合わせ、して頂戴ね」

「はは、それは一生をかけて償わないといけないね……」


 自然と重なる顔に、改めて生きている実感を覚えるのだった。

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