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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話233 ハメ技

【ステラ視点】

 『奈落』の穴ボコが沢山できていました。

 いえ、元々『奈落』の拠点は穴ボコなのですが、そうではなく。

 魔蟻の巣をそのまま拠点にしたが故、また魔蟻が来て暴れたのかと思いましたが、もし魔蟻ならこれほど直線的に穴が空くことはないでしょう。

 あまりにも無差別に穴を空けると天井が落ちてくることもあるみたいなので、非常に危険です。


「つまりこれはっ……!」


 師匠からもらった『患グラス』を大切なアイテム袋からいそいそと取り出して装着!


「ビンゴっ♪」


 とはいえ魔蟻の巣をそのまま使っている『奈落』は入り組んでいて一部屋ずつ当たるのは正直めんどくさいです。

 どうせウィルスに感染している人達はどこにいるか分かるんですし、直通の道作っちゃってもいいですよね。


「ディバインレーザーっ!」


 私も大分師匠に毒されてきた気がします……。

 でもこれが早いんですもの、仕方ありません。


「見つけましたっ!とうっ!」


 人は居なかったみたいですが、ウィルスの根元は分かりやすく赤く点灯していたので直通のルートが作れました。

 高いところからジャンプして降りるくらいなら、身体強化魔法で余裕です。


「清き願いは流星となりて女神に伝えっ!悪しき心は星の藻屑へっ!!光魔導師ステラっ、参上ですっ!!!」

「ステラっち!」


 ふっ、このときのために用意していた口上も調子良く舌が回るようです。

 牛のような鋭利な角に、体長3メートルはあるような超肩幅の広いムキムキマッチョがそこに居ました。

 対して私は人間の5歳児くらいの大きさ。

 普通なら不利ですが、それを覆すのが魔法です。


「ガアァァアアアッ!!」

「ヒーローの口上の途中で攻めるなんてっ、嫌われますよっ!シャイニングバインドっ!」

「グ、グオオオオォォ……」


 光る糸をその手足から筋肉に纏わりつき拘束しただけなのに、明らかに効いているようですね。


焔星の光(アグニ・ルミナ)っ!!」


 火と光で小さな太陽のような星を生成し、そこに閉じ込めてしまいましょう。


「ムチャクチャすぎ……」

「よしっ、これで静かになりましたねっ!じゃあぁ……」


 杖を捨てて()()に切り替えた私は、指の第二関節の上に付いた宝石から魔法陣を順に展開していきます。

 流石に師匠や姉弟子のように素手でやるのは無理ですが私も姉弟子に教わって沢山練習したんですから!


「ディバインレーザーっ、百連撃っ!!!!」

「グググググ……」


 ディバインレーザーは弱点属性なこともあり、三発当てれば仰け反るようになっています。

 だからこうして指をしならせて順に攻撃をすれば、永遠に仰け反ってくれます。

 10本の指からビームが出終わっても、再び親指から続ければ連続攻撃ができます。

 あとは魔力の続く限り続けて、体力を削るだけ。

 時間は掛かりますが、これがなにもさせずに狂戦士(バーサーカー)を攻略する、ハメ技です!


「ゲオオオオオオオォォォオオォォォォ…………」

「お、終わった……」

「ドロップ品確認ヨシっ!」


 ふぅ、やり遂げましたよ、師匠!


「属性相性最悪と最適の差なのは分かってるケド、こうもあっさり倒されると、拍子抜けなんですケドぉ……」

「もしかして、余計なことしちゃいましたか?」


 確か因縁の相手だったと聞いてますが、やっちゃいました?

 いや、()っちゃったのは確かなんですけど……。


「いや、正直劣勢だったから助かった。流石は『教会』のクランマスターだな」

「ふっふっふっ……!これが大聖女の弟子の力ですよっ!」

「ソラちは『褒めるとすぐ調子に乗るのが可愛いところ』とか言ってたケド、むしろ弱点なんじゃない?」

「そんな、可愛いなんて……」

「チョロいな。そんなんでどこかに拐われてしまわないか心配じゃないか?」


 むしろ『教会』に拐われて居着いたのがクランマスターになった経緯ですからね。


「おっ、その照れ顔イイね!はい、チーズ♪」

「あ、コラぁっ!?」


 不意打ちで撮られて世界中に拡散されるの、最悪過ぎます。

 なまじ師匠の婚約者で発信力があるうえにセインターのヘビーユーザーなだけに、数百万人に一斉に見られるという最悪の極み。


「『狂戦士討伐したソラちの弟子とチェキ❤️』っと、送信♪」

「もうっ、撮ってるヒマなんてないでしょうっ?以外にも魔物は溢れてるんですからっ!!ほらっ、はやく行きますよっ!!!」


 堪えきれなくなった私はアヴリルさんを引っ張って『奈落』の拠点を飛び出すのでした。

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