第871話 連携
先ほどの手法で一ヶ所に集めては重力で潰しを繰り返しを続けること小一時間。
サイクロプスの群れが半分を越えた辺りから彼らもワンパターンでやられるわけではなく、抵抗の兆しを見せつつあった。
普通の魔物と違う点として、この魔境にいる魔物は学びを得て攻撃手法を変えるということが出来るようになっている。
僕はそれが出来る者達のことを魔族と呼んでいるが、果たして定義として合っているのかはわからない。
彼らは動くという点では魔物や魔族と同じ特徴があるが、呼吸をしたり何かを食べて生命活動を延長しているわけではないからだ。
殺した人間や魔物、動物の魔力は創造主である邪神に還元されるだけで、彼らは魔力が足りなくなれば活動を終えるか、再び側と魔力を邪神から供給されて延命させられるかのどちらかだ。
どちらかといえば、彼らは邪神の手足の代わりとなるゴーレムと言った方が正確なのかもしれない。
「『来るぞ、構えろ!』」
「グオオオッ!」
具体的にはこの目から発射される、無属性のビーム砲。
それは魔法というよりも魔力の塊に近く、人間のように手を使わない関係上、発生が非常に早い。
しかも本当に魔法ではないため、魔法陣の展開をする必要がない点でも発生の早さを助長している。
「『リフレクトバリア隊、構え!』」
「は、はいっ!リフレクトバリア!」
まるでレーザービームを浴びせるようなその魔力の塊は、例えるなら電車がコンビニに突撃するような交通事故。
リフレクトバリアはタイミングが合ってさえいれば無謀と思われる魔法も弾き返すことが出来る。
口上の必要な最上級魔法や超重量級であるサイクロプスの物理攻撃などは流石に無理だが、今回の場合は大丈夫だろう。
「『タイミングが違う、漏れるぞ!第二陣、構え!』」
「リフレクトバリア!」
割れてしまった一人目のバリアの後ろに張ったもうひとりのバリアが見事に弾き返し、サイクロプスの目を焼いた。
「グオオオォオオオォオ!!」
その巨体が倒れると、それを涼花さんが質量特異点に指定する。
またサイクロプス達の塊が出来上がると、一体のサイクロプスを上空に投げる。
まるで今からプロレスのコーナーからジャンプしてダイビング技をかけるかのように軽やかに手慣れた動き。
だがパターンに入ったわけではない。
超重力でサイクロプスの塊が地に這うタイミングで、サイクロプス達は一斉に上を向いたのだ。
それは一匹を殺してでも多数を助けるという生存本能がそうさせているのか。
その一つ目は上空から降りてくる一匹のサイクロプスの後ろめがけてロックオンしていた。
上空のサイクロプスは目を閉じているあたり、そちらは死を受け入れているのが怖いところだ。
邪神の命令だからかもしれないが、トロッコ問題もサイクロプス達にかかれば考えるまでもないのだろう。
いくら涼花さんがサイクロプスの上に隠れているとしても、何十体のサイクロプスからのレーザービームの前には無意味だ。
地上にいるサイクロプス達の目が光り輝いた瞬間、僕は最大サイズのリフレクトバリアを張った。
「『連携するのが貴様達だけと思うな――リフレクトバリア』」
上に向いていたすべての目が同時に上側に攻撃したが、それが大きな半球に見事にすべて反射される。
威力が二倍となって発動者に返ってきたレーザービームはすべてのサイクロプスの本体である目を焼いた。
「『貴様らの敗因は、時間差や無差別に魔法を放たなかったことだ。統率のとれた同時攻撃ほど、御しやすいものはない』」




