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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第868話 挨拶

「はぁっ、はっ……疲れた」


 僕が寝ようかと提案しようとしたところ、既に「すぅ、すぅ」と可愛らしい寝息を立てて寝ていた。

 元々休息を取るために仮拠点を立てたのだから今は寝るのが本来の仕事なんだけど、憑き物(発情)が落ちて寝られるようになったのなら()()()()()甲斐があったというものだ。

 いや……その憑き物を付けたのは僕だから、僕がなんとかするのは当たり前ではあるんだけど。


「ぬ、抜けない……」


 抱きついたまま寝てしまったからか、エルーちゃんが離してくれない。

 そういえば婚約前もこんな事があったなと思い出した。

 あのときと違うのは、この状況で眠れなくなることはなくなったということだ――




 ――その日、僕は久しぶりに素敵な夢を見た。

 お祖母ちゃんの家の縁側でお祖母ちゃんが膝枕して撫でてくれる夢。

 これは現実ではないことは分かっているけど、それでも口に出さずにはいられなかった。


『おばあちゃん、ごめんなさい。ぼく、あのときのこと……あやまりたかったんだ……』


 お祖母ちゃんはなにも言わず、ただ僕のことを微笑みながら撫でてくれるだけだった。

 許してもらおうとかそういう感情はなく、ただ一方的に謝っておきたかった。

 それが夢で、もう二度と届かなかったとしても、彼女からの返事がなくとも、問題はない。

 もう人伝に本人の気持ちは知ってるから――




「――んぅ……」

「おはよう、ソラちゃん」


 ゆさゆさ、ゆさゆさ。


 もう起きる時間かと目を開けると、僕の顔を涼しい顔した涼花さんが上から覗いてくるように僕を見つめていた。

 もしかして、時間になったからゆさゆさと優しく起こしてくれたのだろうか?

 こんなに幸せな夢は久しぶりだったから、時間が過ぎるのがあっという間だったかもしれない。


「りょうかさんだぁ……」

「ふふ、甘えん坊さんだ」


 涼花さんは愛おしさに目を細めるも、正直胸で顔の半分も見えていない。


 ゆさゆさ、ゆさゆさ。


 揺れる度に胸が喋ってるように見える……なんてことを考えていると、やがて思考が少しクリアになってくる。

 朝だし生理現象のせいで、ちょっとえっちな思考になっちゃってるのかも?


 夢の中ではお祖母ちゃんの筋の細ばった太ももに膝枕されているのだと思っていたが、どうやら僕は今涼花さんの鍛え抜かれた太ももに膝枕されていたらしい。

 僕は()()()()()()()()にすりすりすると、涼花さんは僕の髪の長い部分をそっとつまむと、キスを落とした。


「あのね、すごい……いいゆめ、みたの」


 僕が寝ぼけながらお祖母ちゃんに膝枕された夢を語ると、涼花さんはお父さんのように優しく低い声で頷きながら聞いてくれていた。


 ゆさゆさ、ゆさゆさ。


 幸せなことの話ができるって、素敵なことだなぁなんて、このときの僕は思っていた。

 ところで涼花さん、もう起きたんだから揺らさなくていいんだよ?


「そうか、それは素敵な夢だね。ところでソラちゃん……どうしてその夢が見れたか、自分でも分かるかい?」


 なんだか涼花さんが少し焦ってきたのを感じ、僕はちゃんと考えないといけないかな?と疑問に思いながら冴えない頭で考察することにした。

 確かにあれだけ悪夢しか見なかった僕が本当に何年ぶりかに幸せな夢を見たのだから、それはきちんと考察して次回に活かすべきだろう。


「んんっ……そういえば昨日、エルーちゃんと繋がったまま寝ちゃったの」


 他の人に打ち明けるのは恥ずかしいけど、僕が悪夢を見ないためには大切なことだと思って話すことにした。


 ゆさゆさ、ゆさゆさ。


 そのことを思い出したら、昨日の出来事を鮮明に思い出してきて、更にはこの適度な揺れのせいか僕の生理現象はどんどん力を蓄えていく。


「つまり外側からだけでなく、内側から粘膜同士で接触したことで、負の感情が溜まる前にエルー君に吸収されていったと?」

「んんっ、涼花さん……言い方いやらしいよ……でも、そうかも」


 どうやらエルーちゃんの僕の負の感情を吸収する力が普段の皮膚の接触以上に高まる方法を、偶然見つけてしまったらしい。

 多分口同士でもいいから、キスでいいかもしれないけど、正直キスしながら寝るのは至難の業だろう。

 でもまさかこんな偶然にも睡眠の質の高め方の最適解を知るなんて思わなかったよ……。


「つまり、今のエルー君は……」

「いつもより何倍もの負の感情が僕から流れてきて、それを全てえっちな感情に代えてるから……ってあれ?そういえば、エルーちゃんは?」


 そう聞くと、涼花さんが突然僕の方から目を背けて横を向く。

 僕の下半身のテントでも見てるのかと思ったが、視線の先には明らかにテントよりもふっくらとしている毛布がそこにはあった。


 そう言われると、ゆさゆさと揺れていたものの正体がやがてはっきりしてくる。

 どうやら涼花さんが僕を起こすために揺さぶっていたわけではなかったらしい。


「あっ、んんっ……!」


 その事実に気づいた僕は、やがて認識してしまった気持ちいい波の正体を確定させるために毛布をばさっと横に避けた。

 可愛らしいお尻が「こんにちは」と丁寧に挨拶してきた。


「はぁっ、はぁっ……そあさまっ、もうっ!!ごっ、ごめんなさいっ、んんんん~~~ッ!!」

「ちょっ、エルーちゃっっ!?」


 朝から訳の分からぬ嬌声とともに、とんだご挨拶を食らってしまったらしい。

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