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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第863話 爆撃

 ゆっくりと歩みを進めながら蹂躙していくこと1日。

 ここからが本当の魔境。

 ここで出現する全ての魔物の対処をひとつでも誤れば、大怪我のもとになる可能性を秘めている。


「『『黒魔道士という魔物は瀕死になると死に際に炎と闇の上級合成魔法、ダークエクスプロージョンを放ってくる。これはいわば人間爆弾のようなもので、敵味方関係なく周囲10メートルを全て巻き込む自爆だ』』」

「なるほど……倒した時こそ油断をするな、と?」

「『『違う、それは当たり前の話だ。アイテムをドロップするまで、魔境(ここ)の敵は生きていると思え』』」


 ここら辺は全身をローブで包まれた黒魔道士が大量に湧くゾーン。

 黒魔道士は当然のように魔法で空中を自在に飛んでくるので、四方八方に気を配る必要がある。


 多重憑依した今の僕の場合、自然回復で最大魔力を超過した分は大気中に霧散する。

 その魔力を使い、まるで自ら鳴らした音で空間を把握する反響定位(エコーロケーション)のように、数十メートルなら動いている生き物を立体的に把握できる。

 ただこれは魔力総量が跳ね上がって霧散する無駄な魔力があるような今の僕以外のような存在にしかできないバグ技のようなものだ。


「――無刀・夢幻の舞、閻魔――」


 涼花さんは僕でさえ見えない斬撃で、近付く黒魔道士を粉微塵にしていた。


「つまり、中途半端な攻撃で倒せないでいると爆発するから、こうやって一撃で撃墜してしまえばいいということだね?」

「なるほど、瀕死にさえしなければ爆発しないと……」

「『『本質はそこではない』』」

「?」

「『『――妖精の森を照らす壮麗なる聖獣よ、今我承りし力により顕現せよ、聖獣プシュケー――』』」


 風の聖獣であるプシーを召喚し、竜巻を生成して黒魔道士を一ヶ所に集めていく。

 そうしたら群れのうちの一匹を選んで、倒さないくらいの絶妙な蹴りを入れて他の群れに押し付ける。


 すると一匹の黒魔道士からダークエクスプロージョンが発動し爆発すると、それが別の黒魔道士に被弾する。

 そして被弾した黒魔道士はまた瀕死となり、それが連鎖していく。


「『『注目すべきはどんな状況下でも黒魔道士は構わず爆発するということだ。10メートルという制約をこちらから取っ払えば、このように連鎖爆撃が可能となる』』」

「うーん、汚い花火過ぎる……」

「『『これは戦争だ。経験値が無意味な以上、今後のためにもいかに魔力を温存して多量に倒すかをよく考えろ』』」

「もう、あの人が邪神で魔王でいいんじゃないかな……」


 ろくでもないこと言わないでよ、凛ちゃん……。

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