第860話 反撃
「いってらっしゃい、みんな」
ワープ陣の前で聖女院の皆さんに見送りをしてもらう。
「ソラちゃん、リンちゃん……!」
「わわっ!」
「サクラさん?」
二人ともまとめてサクラさんに抱き締められてしまった。
「あなた達子供達に任せるしかないなんて、本当に情けない話ね……」
「もう成人ですよ、私達は」
「サクラさん、こういうのは適材適所です」
「絶対に、帰ってくるのよ?先に死んだら、許さないから……」
顔は見えなかったけど、その声は震えていた。
きっとまだ克服できていないトラウマを恐れているのだろう。
僕は大丈夫とその大きな背中を抱き締めた。
僕たちが無事に帰ってきたその時には、彼女のトラウマも少しは解消していることを願おう。
願わくば彼女が再び魔王に会わないことだが。
南の国の端までワープすると、今度は子供の方が待ってくれていた。
「来たわね」
「真桜ちゃん、親衛隊の皆さん、前線のキープありがとうございます。結構押し返しましたね」
「お安いご用よ。まさか齢1でカンストするとは思わなんだ……」
パシッとハイタッチを交わし、役割を交代する。
真桜ちゃんは魔王の侵攻があったときに備えて一度聖女院へ下がっていてもらうことになっている。
ここからは一転攻勢、僕たちの攻める番だ。
「ステラが居るところが最前線よ」
「分かりました、ありがとうございます」
「二人とも、勝ってきなさい」
「「はいっ!」」
「ディバインレーザーッ!」
「サンダーボルト!」
しばらく前に進むと、エクレールさんとステラちゃんがいた。
守りを固めるためには過剰戦力であることは認知していたけれど、きちんと僕たちのために歩みを進めてくれていた。
「多重眷属憑依――」
「あっ、師匠っ!」
「『『下がっていろ』』」
「「は、はいっ!」」
「『『――崇高なる覇王の逆鱗よ、今我承りし祝福が賊子を蹂躙せし紫電の驟雨となれ――』』」
眷属憑依を行って特大の最上級魔法を放つまでのスパンを極力まで減らした。
魔境は残忍な魔物が多く棲息しているが、遠くから一撃で倒してしまえば、何のリスクも持たなくて済むようになる。
昔のステータスじゃあそんなことできなかったけど、今の僕にならその戦法が使える。
「『『――叛逆の炸裂閃弾――』』」
まるで流星群かのような曲線の巨大隕石が降り注ぐと、辺り一面の魔物を文字通り蹂躙していく。
辺りの魔物は全て邪神が生成した魔物だから、心置きなく倒すことができる。
「相変わらず無茶苦茶ですねぇ、師匠はぁ……」
「『『さて、反撃開始だ』』」




