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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第854話 満点

「ごきげんよう、ソラ」

「リリエラさん、ごきげんよう」

「結果、張り出されてるらしいわよ。見に行ったかしら?」

「まだです」

「そう。じゃあ一緒に行きましょう」


 期末試験終わりの翌日、僕は結果を知るために登校していた。


「最近はセインターでの登場が多いみたいね」

「どちらかというと勝手に晒されているんですけどね……」


 婚約者は自由人が多すぎる。




1位 奏天          1000点

1位 リリエラ・マクラレン  1000点

3位 エルーシア       998点

4位 セラフィー       904点

5位 イザベラ・フォークナー 884点




「わぁ、リリエラさん!おめでとうございます!」

「あなたと同じ土俵にやっと立てたわ。それに、義姉(あね)になるんだもの。多少の威厳は必要でしょう?」

「そんなものなくても、私はリリエラさんのこと尊敬してますし、大好きですよ」

「もう、すぐそういうこと言うんだから……」


 最近、こうしてリリエラさんを恥ずかしがらせるのがマイブームになっている。

 いや、そういう趣味があるとかではなく、素直に好きと伝えるようにしている。

 僕もいつこの世から居なくなるか分からない以上、最後にした会話で悔やみたくないからだ。

 お父さんやお祖母ちゃんなど、ケンカ別れしてしまったトラウマがどうしても頭をよぎるから、仲良くしている人には定期的に肯定的な言葉を伝えるようにしたいという僕のエゴだ。


「ま、私のことはいいのよ」

「エルーちゃんも凄い、ほぼ満点だ!よく頑張ったね」

「……」

「エルーちゃん?」

「じゃあ私は行くわね」

「あっ、リリエラさん……」


 リリエラさんはエルーちゃんの肩に手を置く。


「あなたはよく頑張ったわ」


 リリエラさんが去ると、エルーちゃんは手を繋いできた。


「ソラ様、私……」

「今日はテスト返しだけだから、寮に戻ろっか」




 あのリリエラさんが励ましたということは、絶対に軽く受けとめてはいけないことだと思い、エルーちゃんの部屋で話を聞くことにした。

 初めは躊躇っていたようだが、僕が頑張ったねと言って抱き締めると、ぽつぽつと話し始めてくれた。


「数学でケアレスミスしたんです。考え方は合っていましたが、計算ミスでした」

「そっか」

「私はソラ様に比べれば生ぬるい存在です。それはゆとりのある環境で育ってきたからかもしれません。ですがリリエラ様に、『隣に並びたいのなら、全力で食らい付きなさい』とアドバイスをいただいたのです」


 リリエラさんは、僕に遠慮するエルーちゃんの姿を見て歪だと思ったんだろう。

 確かに主従関係である以上、エルーちゃんが僕を立てて一歩引くのは職業上仕方ないことだ。

 でも恋人同士の時間や学園生活まで一歩引く必要はないのだ。

 それは本来お仕事の時間ではないのだから。


「知力と暗記は別物だよ。ほら、ケアレスミスなら次間違えなければ良い話でしょう?」

「ですが、次の試験はもうないのです……ぐすっ」


 涙ぐむ姿も愛らしいけれど、僕が涙を見ないように抱き締めると、腰を回して抱きついてくれた。


「私は、学生のうちに一度でもいいのであなたの隣に並びたかったのです……。ですがリリエラ様が私に教えてくださり沢山お勉強もいたしましたが、結局駄目でした」


 僕が学園にいない間にそんなことになっていたのか。


「私、悔しいです……」


 失敗することもまた人生。

 僕なんて前世でいっぱい間違えてきたんだよ。

 でも全力でやった人にたいして茶化すようなことはしたくなかったので、僕はなにも言わずただエルーちゃんの気が済むまでぎゅっと抱き締め続けていることにした。

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