第844話 関係
自分で名付けておいてなんだけど、ツインテールでエンジェルちゃんなんて名前、いかにも地雷って感じするよね……。
「エンジェルちゃん、素材が良すぎない?」
「スモモ殿は話がわかりそうだね」
「じゃあエンジェルちゃん、持ち帰ってもいい?」
スモモさんにまるでぬいぐるみのように抱き締められる僕。
そして僕はぬいぐるみを抱き締める。
マトリョーシカ人形か何か?
「エンジェルちゃんが良いのなら構わないよ」
「いいわけないじゃないですか……」
むしろ、どうして良いと思ったの?
「ちぇっ……いちゃついてるの横からかっ拐おうとしてたのに、リョウさんも全然嫉妬しないんだもん、つまんないわ」
別に貴女を喜ばせるためにチーム組んだんじゃないから。
さっき男の人たちには嫉妬して近付かないようにしていたのに女の子は良いの?
僕、いまだに涼花さんの基準がよくわからないよ。
「ハァ、付き合ってられん……敵襲が来たら起こしな」
馬車のとなりの席で胡座をかき腕を組むマーレさん。
「そういうマーレさんは、クラスクさんとかが気になったりしないんでしょうか?」
「よく聞かれっけどな。アタイはこんななよっちいのはゴメンだよ」
「うっ、そ、そんなに言わなくても……」
「こいつらは勝手にイチャこいてるが、アタイの知ったこっちゃないね」
ああ、イチャこいてはいるのね……。
男性一人で女性二人のチームなんて普通は見るだけで敵を作りそうなハーレムパーティを連想してしまうものだけど、どうやらそうではなく、クラスクさんと結衣花さんの暗そうなコンビが実はやることやっていたらしい。
その事実確認をするかのように、二人は顔を見合わせて火照っていた。
「えと、獣人特有の日は大丈夫なんですか?」
「マセガキが……」
いや、ガキじゃないってば。
下手したらセクハラなんだけど、女性同士だとこういう話はするって聖女学園で学んだんだからね?
それに獣人にとって発情期は避けては通れない話題だから、男女間で発情期の話をしても獣人的には殆ど何も感じないんだそう。
「いいかガキ、そういうのは店で消化してくもんなんだよ。Bランクと違って金持ってるからな。時期になったら金払ってプロに頼む。これがやり方ってやつよ」
お店というのは、獣人専用のそういうお店だろう。
タダで答えてくれるなんて、存外面倒見のいい人のようだ。
パーティの中では二人を引っ張っていくオラオラ系かと思っていたけど、遠回しに見えるお節介さはソーニャさんに近いものを感じる。
どうやら『にゃんだふる』以外にもそういった店舗はあるようで、それらは比較的安上がりで満足できるものとなっているらしい。
「なるほど……。では、教えてくださったお礼にこれを……」
「は……!?」
教えて貰ったお礼に、持ち腐れているニャンダカードを渡すことにした。
「いやお前……!?コイツ何処で……!?!?」
「手持ちにあったものです。でも私には無縁のものですので……」
「お前、さては貴族だな……?」
「要りませんか?」
パシッと横取るように奪っていった。
「……要らないとは言ってない」




