第828話 取材
「ごちそうさまでした」
「本日はお休みですが、何をなさいますか?」
「せっかくだから、この端末を活用しようかなって」
「活用、ですか?」
「うん。今まで聖女院の中のこととか、聖女のことってブラックボックスで全然分からなかったじゃない?だから、これを機に少しは身近に感じてもらおうと思って。もうルークさんには許可もらったよ」
「素敵です!」
僕は端末を取り出してフレームを設定する。
へぇ、三次元空間のどこに置くのか設定できるんだ。
普通のビデオカメラだと俯瞰視点なんて第三者の手を借りて撮影ボタンを押してもらうしかないのだけど、これは全て自分で見ながら設定できる。
「まず手始めに、エルーちゃんかな」
「えっ……ええっ!?」
「はいっ!今日は私のお休みですが、せっかくなので聖女院の中を回って、どんなことをしているのか皆さんにお見せしたいと思います!」
前世のお仕事モードに切り換える。
間違える度に叩かれていたから、この切り換えも一瞬だ。
「まずはメイドさんから!私の専属メイドのエルーシアちゃんです」
「よ、よろしくお願いします……!」
「エルーちゃん、普段はどんなことをしていますか?」
「メイドにも様々種類は御座いますが、私はウェイティングメイドと呼ばれる聖女様お付きのメイドになります。基本的にはソラ様の補佐として御召し替えやお茶出しをしたりします。私はソラ様と同じまだ学生の身分ですので、聖女学園に通いながら学園での補佐も行っております」
「他にもお掃除とかをするハウスメイドさんとか、お洗濯するランドリーメイドさんとかいるよね」
「はい。聖女院はローテーションで役割を交代し、個人でできることを増やしていくことが方針で御座います。まだまだ新参で、学ぶことばかりですから」
「でもエルーちゃんも私の宮のメイド長だよね。こんなに若くしてメイド長の一人なんだから、本当に凄いよね」
僕の後宮だということは恥ずかしいので伏せておく。
「そんな、私の肩書きは名ばかりのもので、私自信は偉くないですから……」
「謙遜しないでよ。だってエリス様に選ばれたってことは、エリス様に認められたってことなんでしょう?」
「それはたまたま私に聖女様を癒すことができただけで……」
「きっと前世で徳を積んだお陰だよ。エルーちゃんはどうして聖女院に応募したの?」
僕自身は知っているけれど、インタビュー風に仕立てたくてそう質問した。
「幼少の頃に疫病にかかっているところを、サクラ様がお救いくださったのです。お前が無事に生きていられるのも聖女様のお陰だと両親に教わって育ってきました。以来、私は聖女様にお仕えしたいと思うようになりました」
「素敵な思い出。エルーちゃんは今、幸せ?」
「はいっ!ソラ様にお仕えできて、とても幸せです」
「ありがとう。これで投稿っと……じゃ、次行ってみよう!」




