第827話 通知
「ただいま」
「おかえりなさいませ、ソラ様」
後宮に帰るとみんながくつろいでいた。
「ソラ様も『神託の鏡』、いただいたのですね」
「うん。皆は何してたの?」
「使い方を皆様で共有しておりました」
「例えば、ハ○撮りセ……むーっ!」
「はいはい、ろくでもないこと教えないの。端末が盗まれたら、誰かに悪用されたりするんだからね?」
その言葉今世ではまだ存在しないはずなんだけど、毎回忍ちゃんはどっから仕入れてくるんだ。
「具体的には?」
「『全世界に晒されたくなければ、いうことを聞け』って言われて、いいなりになるしかならなくなっちゃうよ?」
「そうなったら、力ずくで奪い返せばいい」
「いや、そもそも出先で興奮させたとて、誰に処理させる気なの……」
お互いに近くにいないのに、興奮させるメリットがないでしょうが。
「ちっちっち、ソラ様は分かっていらっしゃらないですね。そうやって悶々としてお帰りになったところをいただくのですよ」
「この鬼っ!もう出先で忍ちゃんの通知見ないからね!」
「ふふ、出先でなければ見ていただけるのですね」
うん、このドスケベ忍者は無視しよう。
「ソラ様は私たちの心配をしていらっしゃるのですから、そう苛められてはご機嫌が悪くなってしまわれますよ」
「みんな可愛いって自覚がないんだよ、全くもう……」
そんなこと言っていると、急に僕の端末からピコンという音が鳴る。
って、あれあれ、なんか鳴り止まずピピピピと壊れたように鳴りはじめたんだけど!?
「わっ、な、何急に!?」
「おそらくサツキ様のご投稿からアカウントの存在に気が付いた民の皆様が、一斉にフォローなされたのかと」
「お、恐るべしインフルエンサー……」
「お義母様が言えた立場ではないのでは?」
そんなことないもん……多分。
「とりあえず通知切って……うーん、凄い……いっぱい……」
「なんか言い方がえっち……」
何考えてんの、凛ちゃん……?
「凛ちゃんも似たようなものじゃない」
「でも、あっという間に越えましたよ」
「凄い、どんどん増えてく!?」
まだ貴族にも平民にもそんなに普及していないだろうに、ものの数時間で十万人を超えたんだけど……。
「女神様の信者なら皆さんフォローするに決まってますからね」
「そんな、義務でするようなものじゃないのに……」
「今セインターを利用しているのは主に王族や貴族、商人達よ。そういった人達からすれば聖女様の最新情報は話題であり、商材になりうるものよ。あなたも聖女なら少しくらいは理解しておきなさい」
「は、はい……」
マヤさんに常識を身に付けろと怒られてしまった。
ピコン。
「ん?」
おかしいな、通知切ったはずなのに……と思ったら、セインの方だった。
エルーちゃんから……?
「エルーちゃん、近くに居るなら言葉で話そうよ……」
「いえ、言葉にするのはお恥ずかしいので……」
これがZ世代の流儀……。
ってなになに……?
「本日は、紫のレースです」ってぇ……!?
「……エルーちゃん、怒るよ?」
「そ、そんなっ……!?どうしてでしょうか?」
僕は頭を抱えながら、監視員さんに見られていることを懇切丁寧に説明する羽目になった。
そのせいで他人に見られていることに興奮したエルーちゃんを治めるのに少し苦労したものの、それはまた別の話……。




