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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話221 予算案

【リリエラ・マクラレン視点】

「……神流、備品の予算はまだ削れるはずよ」


 神流と来年の予算について話し合う。

 ソラがいない今、学園のことは私たちで回さないといけない。


 副会長としてその辺りの知識は、勿論涼花様にご教授いただいたので私も持っている。

 特にソラからは予算の相談をよく受けていたし、幼い頃から数字を見せられてきた商人貴族であるマクラレン侯爵家の出である私の知識が活かせる場であることは私が一番理解している。


 あの子の金銭感覚のなさは生きる世界が違うところから来ていると今はわかっているが、あの時は平民育ちで知らなかったのだと勘違いしていたことに懐かしさすら感じてくる。

 ――もうすぐソラがシエラでいることをやめてから、一年が経とうとしていた。


「……それは聖徒会の構成が基本的に聖女様や聖女院所属、王族や高位の貴族家で構成されており、お歴々がご持参のティーバッグを使用なさるからでしょうか?」

「違うわ。言い分は少しわかるけれど……私たち聖徒会は平民問わずに声はかけているつもりだし、その門戸は開いているわ」


 確かに平民と比べると貴族家は知識で舐められるわけにはいかないために家庭教師を雇って知識を付ける家が多い。

 特に私たちのような高位の貴族はなまじお金を持っているため、世の中でも優先的に実力のある家庭教師を得意分野別に雇うくらいのことはしている。


「でも、たとえそう思ったとしても、口にしてはいけないわ」

「いえ、私はただ予算削減の理由が分からず、邪推してしまっただけで、本当にそう考えているわけでは……!」

「考えているかいないかは問題ではないのよ。あなたもソラの婚約者として今後は貴族の立場を捨てて生きていくかもしれないけれど、今は次期聖徒会長よ。発言する前に、常にそれが聖女学園の顔である聖徒会長として相応しいかどうか、考えるようにしなさい。あなたの一挙手一投足は、いつどなたに聞かれているか分からないのだから……」

「そうですね。すみません、気を付けるようにいたします」

「来賓や『聖女様の目安箱』で相談を受けるとき、イベント行事でお茶出しはするでしょう?もし私たちが毎回の聖徒会で消費したとしても、毎年仕入れている分の三割も使うことはないわ」

「つまり、仕入先の変更の検討でしょうか?」

「惜しいわね。仕入先のメドー商会は懇意にしているシュライヒ家のお陰で最近羽振りが良く、まとめて仕入れると一割得するセット販売を開始したことは知っているかしら?」

「存じ上げませんでした。ですが、メドー商会も常に羽振りが良いとは限りません。セット購入ができなくなった時のために甘めに予算を見積もっておくことは大事なことでは?」

「そうなったら一割足すだけだから、聖徒会に割り当てられた自由予算を消費すればいいだけよ。それに足りなくなったら来賓の分意外は安いものを仕入れればいいだけよ。今でさえ最高級のものを仕入れているのだから、贅沢は抑えるべきだというものがあなたの婚約者の望む回答よ」

「ありがとうございます、流石はリリエラ会長代理でございますね」

「……その呼び方はやめなさい。私はあんなの認めないわ。会長はソラだけでいいのよ」


 私は会長の座まで奪う気はない。

 というより、ただ役割を投げつけられただけ。


「ふふ、呼び方まで変えられて、すっかり仲良しでございますね」

「何よ、エルーシア……嫉妬なら受け付けないわよ。だって私の義妹(いもうと)だもの」


 それだけは私も誰にも譲れない。

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