閑話220 恩返し
【東子視点】
「リン様、肌、綺麗」
皆様でお湯をいただいたあと、脱衣所で着替えているとソーニャ様がお声をかけてくださいました。
「それを言ったら、皆さんだって綺麗じゃないですか……」
「私達は、ソラ様からいただいた『聖なる雫』をつけているからです」
「天然でこれほどお綺麗なのは、やはり女神様のご加護のお陰でしょうか?」
「天先輩がお気に入りのお二人には言われたくないですよ。でも、確かにこの世界にきてからお肌の調子がよくなったような……」
「おそらく、光属性の方の恩恵なのではないでしょうか?」
「そうなの?」
「はい。リン様はもっと自信をお持ちになってください」
「少なくともソラ様のお気に召していらっしゃるのですから」
「それは東子ちゃんもね」
自分のことを言われるのはなんともむず痒いものですね……。
ですが、お化粧で隠すしかなかったそばかすがなくなったのはソラ様の『聖なる雫』のお陰です。
あの液をかけただけでみるみるうちに綺麗になっていき、とても自分の姿だとは思えないほどに見違えてしまいました。
自分の姿に少し自信を持てるようになったのも、全て愛しのソラ様のお陰でございます。
「私からすると、皆様素敵でございますよ」
「そう仰るメルヴィナ様も過去にその美貌でソラ様のソラ様を興奮させたではございませんか」
「エ、エルーシア様……!そのお話は鼻血が出るのでお止めくださいと……!」
「まぁっ!メルヴィナ様はソラ様のこと、どうお思いなのですか?」
「ソラ様は弟であり妹である、私にはそれだけで十分でございます」
それは一見、私達小娘とは違い、達観した価値観なのかと思いましたが、過去の私となにか重なるものがあるような気がしました。
「メルヴィナ様、ソラ様はきっと受け止めてくださいますよ」
「受け止めてくれたとしても重荷になることは望みませんから……」
「メルヴィナ様はきっと重荷なんかにはなりません!」
私が婚約にこじつけられたのも、エルーシア様とリン様のお陰でございます。
今こそ私が受けた恩を返すときだと、そう思い至りました。
「その『気色』はきっとソラ様のお役に立つことでしょうし、それだけの信頼を得ていることはメルヴィナ様もお気づきなのではございませんか?」
「どうしてそれを……」
「そ、それは……この間の夜伽の後、ソラ様がメルヴィナ様のお話をしていたからです。『えっちだけどとても優しいお姉さん』と仰っておられましたよ」
「今こそ共に前を向く時です、メルヴィナ様。そうですね……こういうのは、どうでしょう?」
「まぁっ……!なんてこと……!」
こ、これは……!?
リボンつきの……可愛い可愛い女性下着!?
まるで爆弾を直接ご投下なさるエルーシア様のお姿に、私は今後一生ついていくと決意しました。




