閑話218 身内話
【リリエラ・マクラレン視点】
「はぁ……」
いつもはメイドに任せていた身体を洗うことも、こうして一人でできるようになってきた。
湯船に浸かり、今日の出来事を振り返る。
専属秘書として、そして親友として、死にかけ心配をかけたソラに対して怒るつもりでいたのに、それ以上に驚くような出来事が起きてしまった。
初めは今回も私がソラのことをシエラだと気付かなかった時のように、女神エリス様の認識阻害で私が気付かないようにされていたのかと思っていたのだが、ソラのことを男だと認識してからもどう見ても女の子にしか見えなかったので、恐らく性別に関しては素なのでしょう。
「どうしたの?ため息ついて」
ちゃぷんと音がして水面が揺れるのを頼りに目をあげていくと、エルフのように決め細かな肌が現れた。
「セレーナ様……」
「お義母様でもいいわよ?」
「わ、わたくしはまだ婚約者ですから……」
「私、予てより娘が欲しかったのよね。ほら、私はあまり多く産めなくて……ルークは一人っ子の男だったでしょう?」
かつて学生時代のお父様がこの人に惹かれ、そして母が嫉妬することになるくらい、周囲から好意を集めていたほどの美貌。
美貌という路線でいくと人生のスタートダッシュを決めていたからなのか、私達とは違ってその血に元ハイエルフの血が混じっているからなのかは不明なものの、言い方がキツい私のお母様と比べると、いい歳の取り方をしているとは感じる。
「ルージュがいるじゃないですか」
「確かにあの子も養子になるけれど、あの子はおべっかばかり言うんだもの。それに、今まで男ばかりで溜まりに溜まっていた娘欲をようやく満たせるのだから、一人なんかじゃ足りないわ」
「なんですか、娘欲って……。それに、あなたにはソラもいるじゃないですか」
「あらあら?リリエラちゃんも、言うようになったわねぇ……」
「ソラには遠慮しないって、決めたんですわ」
「うふふ、こうして話していると、マリエラちゃんと話しているような気分になってくるわ」
「勝手に人を故人みたく言わないでもらえる?相変わらず失礼な人ね」
「お母様!」
「マリエラちゃん!」
「本当にこんなのと家族で、うまくいくかしら……?」
「酷いわ、私はマリエラちゃんと家族になれてとっても嬉しいのに……」
「こんなのでよく公爵夫人が務まるわね……不思議でならないわ」
「そんなこと言って、満更でもなさそうな顔して可愛いのはどっちかしら?」
「い、いいから……リリエラの話してたのでしょう?」
「じ、実は……」
そうして私は、先ほど起きたソラとの出来事を話し始めた。




