第815話 母性
「どちらかというとソラが隠していたことの方がショックだったわ。『もう隠し事はないわね?』と以前に聞いたこと、忘れてないわよね?」
「ぐすっ、うん……。ごめんね、リリエラさん……」
「これじゃあ私が悪いみたいじゃない……ほら、涙拭く!本当にもう隠し事ないんでしょうね?」
「うん、ホントにもうないよ」
「あなた、ちょっと妹属性が高過ぎるわよ」
「そこは弟属性と言ってよ……」
「嫌よ。じゃないとキスしようとした私が報われないもの」
僕が背負う必要のない罪を擦り付けようとしないでよ。
なんで僕の周りの人達は、僕が男だと知ってなお女扱いしたがるの?
僕には理解不能だよ。
「何よ、可愛い顔してこっち見て……まさか、本当にキスして欲しいの?」
「違うよ!なんで男だって分かったのにキスしようとするの?」
それにツッコミを入れるのに疲れただけで、僕はまだリリエラさんがなぜ僕にキスしたがるのか理解していないからね?
貞操感ゆるゆるなリリエラさんだけは、いくら親友だろうと許せないよ。
ルークさんも、なんで止めないで見ているのか分からないよ。
全肯定ルークさん助からない。
「肌も唇もぷるぷるだからよ。それに今にも『キスしてください』と訴えかけてくるかのような顔してるんだもの」
そんな顔してないでしょ、何いきなり。
ワケわかんない暴論で僕を殴り付けないで。
「分かります、お義母様、たまにキスしたくなる顔してますよね」
「……!」
「……!」
無言で握手しないで、セフィー、リリエラさん。
というか何で婚約者と友人が僕にキスしたくなる話で盛り上がってるの?
「でも、お可愛らしいのはリリエラ様も一緒ですよ」
「なっ……セフィー、いきなり何言うの?」
「こんなにリリエラ様がお姉さんしているのも、お義母様からとてつもなく溢れている妹属性のお陰かと」
「確かにお義母様はお世話される妹属性高いですよね」
僕を義母扱いしておいて、とんだ言い種だよ。
「姉というより、どちらかというと刺激されているのは母性なのだけれど」
同級生に母性感じないでよ。
「確かにこうして背伸びしようと頑張ってくれるリリエラさんは好き、かな……」
「ソラ様がデレた」
「デレ期ですね」
「デレ期ですわね」
「デレッデレですね」
こんなのいじめだよ。
「そうですね、お義母様のお世話を焼くリリエラ様はとても素敵です」
「もうっ、恥ずかしいこと言わないの!」
「うふふ、照れてるリリエラちゃん、可愛い♪」
「セ、セレーナ様っ……!」
まあ……照れているリリエラさんが可愛いのには同意かな。




