第811話 粗相
「ソラ様、明けましておめでとうございます」
「ホークスお義父さん、テレシアお義母さん!明けましておめでとうございます」
「娘が粗相をしてはおりませんか?」
「もう、お父さん!恥ずかしいこと聞かないで……」
エルーちゃんの家族を見ているとなんだかほっこりする。
「恥ずかしいということはまさか、本当に粗相を……!?」
「お父さんっ!」
「……ノーコメントで」
「ソ、ソラ様!?」
「な、なんてこと……!?」
僕を怒らすようなことはしていないけれど、エルーちゃんが物理的に粗相をしてしまったのは事実ではある……。
家族に嘘はつけないけれど、エルーちゃんの秘密は守っておきたい気持ちもある。
ほぼ透けて見えてしまっていたような気もするけれど。
「でも私の方が粗相しているし、それに粗相してるエルーちゃんも可愛いから……」
「なっ……!?ソラ様の粗相の方が可愛らしい癖に……!」
「なぁっ!?」
「二人とも可愛いのは分かっているから、そこまでにしておきなさい、二人とも」
「はぁい……」
「涼花様がそう仰るなら……」
恥辱暴露大会会場になりつつあるのを、涼花さんが諫めてくれた。
「うふふ、あのガードの堅かったエルーが目の前で惚気るなんて、歳は取ってみるものですね」
「お、お母さん……」
「テレシアお義母さんはまだお若いでしょうに……」
「あら?嬉しいことを言ってくださいますね」
「ソラ様……?まさかお母さんまで手篭めに……」
「いや、そんなわけないでしょ」
何言ってんの、エルーちゃん?
「ブルーム様がお出でになりました」
「明けましておめでとうございます、皆様」
「ブルーム様、明けましておめでとうございます。此度は我が家のパーティーにお越しくださりありがとうございます」
「いえいえ、私は涼花の家族として来ただけですから。こちらこそお招きくださりありがとうございます」
「いやぁ、その腰の低さ、我々も見習っていかねばなりませんな……」
「公爵様は今でも十分腰が低いお方かと思いますが……」
「私からみたらどっちもどっちだと思うよ……」
「ふっ、それ、ソラ君が言うのかい?」
確かにブルームさんとかには何度も土下座したかもしれないけど、最近の僕は眷属憑依で腰低くないと思う……。
「全く、本当ですわ!シュライヒ家は公爵位だというのに、全員腰が低いのですから!」
「リリエラ、あなたもソラ様の義姉を名乗るのなら半分はシュライヒ家の一員になるのですから、そういう物言いは……」
「そういう弱気な姿勢を見せるから、ルークは仕事を沢山抱えてしまうのです!」
「リリエラさんに、ルークさん!」
そこには赤ん坊を抱いたリリエラさんの姿があった。




