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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第810話 水面

 夕刻、僕たちは一足先にシュライヒ公爵邸を訪れていた。

 明日はパーティーで僕の婚約者の家族を招くことになっている。

 これもマークお義父さんが企画してくれた僕のための催しだ。


「明けましておめでとうございます、マークお義父さん、セレーナお義母さん」

「ソラ君!」

「わぷ、セレーナお義母さん、苦しいよ」

「もう、心配したのよ!」


 熱い抱擁を交わして、お義母さんの胸にうずくまる。

 なんだかとても安心する。


「ごめんなさい、心配かけて……」

「いいの、ソラ君が無事ならそれで。今はソラ君も休むときだから、ここにはいつでも来ていいからね。私達は居るか分からなくても、メルヴィナは必ずいるから」

「ありがとう、お義母さん」

「ソラ様、ご無事で本当に良かったです」


 メルヴィナさんが感極まって泣いている。

 屋敷を訪れると毎回僕のパンツを嗅いでいるような変態だけれど、今回は変態な挙動は一切なかったので、相当心配をかけてしまったみたいだ。


「ちょっと早く来すぎちゃいましたかね?」

「そんなことないさ。婚約者の皆さんも今日はゆっくりしていってください」

「気軽にママと呼んでいいからね。もう家族なんですもの」

「セレーナお義母様……」

「ママ、欲しかった」

「ばぶぅ、ばぁぶぅ」

「もう、みんな可愛すぎるわ!ソラ君も隅に置けないわねぇ」


 一人幼児退行してるのいるけど……。


「うちは女の子に恵まれなかったから、こんなに沢山の義娘ができるなんて感激だわ。今まで女子トークがメイドの子達としか出来なかったのよね」


 女()トーク……?

 うん、気にしないでおこう。




 自室に戻ると、なんだかベッドが大きいものに変わっていた。

 ……余計なお世話だと言いたいところだけど、エルーちゃんに1日我慢させるのは苦痛だと思うので、正直助かる。


 洋風なお屋敷に似つかない和メイド姿のエルーちゃんが袖をふりふりとさせながら奥からやってきた。

 見ているだけなら癒しと卑しの塊なんだけど、僕のもとにやってくると僕にも和メイドを着せてくるから困りものだ。


「私、ソラ様のお心を癒すお役目を担った時、少し不安だったんです。光魔法の使い手であらせられるソラ様のお心なんて、私めで癒せるものなのか、と……」


 この世界にも血液型性格診断みたいなもので、属性魔法の性格診断みたいなものがあるらしい。

 光属性は他人の心を癒すとか言われているらしい。

 確かにステラちゃんは見ているだけで僕の心を癒してくれるけれど、それは水属性のエルーちゃんだって、土属性のマリちゃん先生だって同じことだ。

 笑いのツボや好き嫌いのツボは人によって様々なのだから、こんなのは迷信以外の何物でもないだろう。


「でも、ソラ様のお心が病まれてから、受け身ではいけないことが分かりました。これからより一層ソラ様にくっついてお心を癒しますので、覚悟してくださいね」


 なんとも可愛らしい宣言と共に、僕は深い水面に身を任せていった――

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