第802話 矗々
みんなで一緒に寝るのは夏は暑くて仕方がないけれど、冬は暖かくて助かる。
問題は匂いだけど、後宮ではみんなで決めた同じ香りのシャンプーやボディソープ、化粧品や石鹸、香水、制汗剤などをある程度統一するようになってから、匂いにまみれなくなって快適に過ごせるようになった。
女学園だと女の子が集まるだけで多種多様な匂いが充満していて混ざってしまうので、学園なんかは人によっては慣れるまでちょっと気分が悪くなったりしがちだ。
でも聖女がいる世代だとみんながみんな聖女の好きな香水や聖女が使っている化粧品が流行るので、聖女が来て一年くらい経つと、学園のみんなが同じ匂いを纏ったりする。
僕も自分が聖女ソラであることを公表したのは今年からだけれど、もう今年に入ってすぐに何故か僕や柊さんの使っている化粧品などは学園中にリークされており、やっぱりこの世界の聖女はプライバシーが微塵もないただのフリー素材なんだなと感じる。
……ともあれ、学園の匂いは僕たち聖女の香りが"二強"としてあることになっていて、次点でリリエラさんの匂いが流行っているそうだ。
涼花さんが学園に通っていたときは涼花さんと同じラベンダーを纏っている人が多くいたし、人気者とは得てしてそうなるものなのだろう。
後宮に話を戻すと、流石に10人以上婚約者がいる空間では、流石に一つに統一とはいかない。
匂いにも多少の好みがあるからね。
だから好きな匂いをエルーちゃん含む半分のチームで三種類くらいずつ、涼花さん含むもう半分のチームでもう三種類くらい決めて、計六種類のうち、そのいずれかを日ごとに変え、一日ごとに婚約者同士で匂いを合わせることで競合を阻止してもらっている。
僕がどれを使うかは完全にエルーちゃんにおまかせなのでエルーちゃんの気分だけれど、同じ匂いをしていると婚約者の人達が喜ぶので偏るようなことはしないように、みんなで仲良く日ごとに同じ匂いになるようにしてもらっている。
「ぬくぬくぅ……」
「ふふふ、マリちゃん先生は可愛いなぁ……」
冬休み初日、僕は神流ちゃんの尻尾に抱きついて寝転がっているマリちゃん先生を見て癒されていた。
「抜く抜く……」
「……一応聞くけど、何?」
「すくすく育てたムクムクを矗々と高く聳え立たせ、疾く疾く抜く抜くし、相手をイクイクさせ、最後にムクムクからドクドクさせるのですね……❤️」
隠語で韻を踏まないでよ。
「これぞ『韻語』でございます」
世界中のラッパーに土下座して謝りなさいよ。
「その余計なお口をもう少し閉じていてくれれば、可愛いのにね……」
「猿轡は、こちらにございますよ……!」
どうしてそんなものがすぐ出てくるの?
普通に怖いんだけど……。
婚約者の願いはなるべく叶える質だけど流石に僕、そんな趣味まではないから。
黙っていれば可愛いのに、本当に残念な娘だ。
昨日、あれから結局約束通り忍ちゃんをもらい受けることになったんだけど、やっぱり早まったかな……?
『ソラ様、おはよ』
「きゃぁっ、こらぁっ、ソーニャさんっ!そんなとこぉっ、舐めないでぇっ!」
獣化するようになってからというもの、神流ちゃんとソーニャさんは獣の本能につられてなのか、物理的に舐めてくるようになった。
神流ちゃんは犬っぽく人懐っこい感じで、ソーニャさんは猫っぽく僕に悪戯してくるように舐めてくる。
「……ソラ様、朝からそんなえっちなお声をあげないでくださいませ、んっ」
「……いや、朝からこんなことで発情しないでよ、エルーちゃん」
「ソラ様ぁっ……我慢ができなくなってしまいました……」
「しょ、しょうがないなぁ……」
でも惚れた女の子がこんなに顔を真っ赤にして真っ直ぐ見つめてくれば、何とは言わないけど矗々と高く聳え立っても致し方ないよね。
冬休みの初日、朝御飯の時間に遅れる僕たちの姿があった。




