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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第798話 恋心

 ビィーーーー、ビィーーーー、ビィーーーー


 それは十字に降り注ぐ落雷は、観客席を巻き込み全てを飲み込んでいた。

 それが十字になっていることなど、ここにいる観客も、戦っている柊さん達も、誰も分からなかったことだろう。

 まるで世界が全て真っ白になったかのような空間。

 それは巨大な地下訓練場の観客席も含め、全範囲が巨大魔法の範囲内だったからだ。

 もっと大きい範囲にすることもできるが、わざと絞ったのは威力を上げるため。


 もちろん死なない空間(チュートリアルエリア)なので誰にもダメージはないが、魔法が放たれている間、即死の合図であるブザーが鳴り止むことはなかった。

 やがて光が止みブザーが止むと、観客は皆無言でお祈りをしていた。

 僕が怒っているようにでも見えたのかな?


「『『……あれを耐えるか』』」

「はぁっ、はぁっ、まだ……まだです!」

「けほっ、けほっ……なんやこれ……バケモンやろ……」


 どうやらエルーちゃんが玄武を召喚して最上級合成魔法を使ったらしい。

 最上級合成魔法についてはゲームで登場してすらいない。

 作戦としてはエルーちゃんの立案だろうけど、僕ですら知らない情報……これはエリス様の入れ知恵が入ってる気がする。


「『『どうしてそう、躍起になれる?』』」


 いくら咄嗟の最上級合成魔法で凌いだといっても、水属性と光属性の合成魔法。

 僕たちのは雷属性と光属性の合成魔法なので相性有利で、ある程度のダメージは入ったようだ。

 要するに同じ技を繰り出せば、もう彼女達に止められる手段は残っていないということだ。


「はぁっ、私、前世でも天先輩に助けられて……そのせいで天先輩が目立って、いじめにあっていることを知らないでいました」

「『『何を……』』」

「『そらいろ』が有名になったときなんて、暢気なことに『私が最初に見つけた王子様なのに』って、そんなこと考えていました……。でも、そうして手をこまねいているうちに、天先輩が居なくなってしまったんです」


 点と点が、線で繋がっていく。


「知ってますか?あの後私、エリちゃんにゲームもらったんですけど、その前までは自殺しようとしていたんですよ」

「『『は……?』』」

「家も学校も居場所なんてなかったし、天先輩を愛さなかった世界なんて、生きている価値がなかった。でも、できなかった。結局私は……心が弱かったんです」


 柊さんのお父さんは柊さんを愛さなかった。

 自分に魅力がないことを棚に上げ、再婚した新しい義母は柊さんの美貌を見て自信をなくし、「あんな子供を住まわせているのは私への当て付けだと」罵って離婚していったと聞いている。

 それが理由で彼は柊さんのことを恨み、酒癖も悪くさっさと家を出ていけと毎日怒鳴っていたらしい。

 逆恨みもいいところだ。


「何にもできなかったところに、エリちゃんは道を示してくれた。天先輩が生きてるってことも、私がどうすればいいのかも。一度離れてわかりました。私はもう二度と、あなたを失いたくない……!」

「『『……っ!』』」

「天先輩のことがっ!好きで好きでしょうがないんですっ……!」


 僕はあの世界で、家族以外にも愛されていたことを、この世界に来てはじめて聞かされたのだった。

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