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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第796話 親睦

 ――デモンストレーションより一週間ほど前のこと。


「『――眷属憑依……!』」


 僕は夜にフルマラソンをして婚約者のみんなを寝かせた後、シルヴィを憑依した状態で教皇龍(ハープ)ちゃんを憑依しようと何回も試みていたところだった。


<旦那様、いくら眷属憑依で体力も多くなっているとはいえ、ご無理は……>

<主……眠くないのか?>

<いいから、もう一回やるよ。こっちは時間ないんだから……>


「『っ……駄目か。もう一回だ』」


 シルヴィ単体とハープちゃん単体の憑依なら何度やっても一発で成功するんだけど、二人同時にしようとしたときにバチっとまるで静電気をまとったままドアノブに触れるかのごとくはじかれる感覚に襲われるんだよね。

 これはやみくもにやってもうまくいかないと悟った僕は、視点を変えることにした。


<眷属憑依のそもそもの原理って、どうなってるの?>


 そもそも僕は眷属憑依がどのようにして実現しているのか、よくわかっていないまま使っていたことに気付いた。

 むしろ今までその状態でよく使っていたなとは思うけど……。


<そもそも憑依とは、我々神体を持つ者の魂を降ろすためのものです。これは我々神種族が主従関係に置きたいと思うほどに信頼を置く存在でないといけません>

<シルヴィアはいちいち回りくどい。要するに、主のことを大好きだって気持ちがないとダメってわけだ>

<なるほど……僕たちの場合、それが『愛』ってことになるのかな?>

<<そ、そうだな(ですね)……>>


 ……ん?


<ってことは、えっと……できない原因ってわかり切ってるんじゃ……>

<<?>>

<僕とシルヴィ、僕とハープちゃんに相互の愛情があるとしても、シルヴィとハープちゃん同士で愛情がないからはじかれているんじゃないの?>

<<なっ……!?>>

<……ぶっちゃけ二人って、仲良くないよね?>

<それはシルヴィアのほうに問題があるからな>

<それはシルヴィが無愛想(ぶあいそう)だって言いたいの?>

<なっ……教皇、貴様!?>

<こいつ強くないから、いつもリッチに負けてるんだ。我なら呼ばれれば勝てるというのに……。それに龍種族は、強くない奴には敬意を払わないんだ>

<そういう貴様こそ、強い相手には尻尾を振っているだけのただの犬じゃないか。平民のエルーシアにも尻尾を振っているのは滑稽だったぞ>

<……強くない癖に、よく吠える。自己紹介する犬とは珍しい特技を持っているようだな……>

<貴様……喧嘩を売ってるのか?>

<ストップ!ストーップ!>


 ハープちゃんやスフィンクスは神獣の中でも強い相手にしか屈しないというスタンスを持っているけれど、シルヴィは僕たち聖女と主であるエリス様にのみ膝をつくというスタンス。

 要するに価値観の相違がそのまま嫌悪感につながっているみたいだな……。


<とにかく、ダブル眷属憑依ができないのには二人に問題があることがわかりました>

<それは……>

<……主、別の神獣をスカウトしてきた方がいいんじゃないか?正直、朱雀とかの方が馬が合うぞ>

<いや、そもそも僕朱雀の加護持ってないどころか、火属性魔法使えないから……>

<ですが、正直教皇と馬が合わないのは何万年という規模の話。この1週間でそれを治せというのですか?>

<荒療治が必要なのはわかってるよ。だから僕にも考えがあります>

<<?>>


 僕は眷属憑依を解除して三人で婚約者たちの寝ている後宮ではなく、わざわざ朱雀寮の僕の部屋に戻り、おもむろに聖女結界を張り()()()()をする。


「ま、まさか……!?」

「これから毎晩三人で本番をして、()()()()()()()()()?」

「あ、主……!?本気か!?」

「もちろん!ちょうど避妊魔道具もできたことだし、二人とも本番を希望してたのは知ってるし。僕が二人の好きなところ、いいところとか全部教えてあげるから。逃げることは許さないからね」

「「ひ、ひぃっ!?」」


 お互いに片方に屈したというよりはどちらかというと僕に屈したところはありそうだけれど、僕の『仲良し大作戦』はこうして功を収めたのだった。

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