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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第794話 数千

 三日目。

 イベント行事なので学生は強制参加だが、スポンサーは自由参加だったにも拘わらず、一日目(魔術大会)二日目(武術大会)より観客は多いようだった。


「うわ……昨日よりいっぱいいる……」

「一日目と二日目の全員が参加しておりますからね。聖女様が開く以上、たとえそれが参加自由形のデモンストレーションであっても、学園への入場権利を持っている民や貴族は当然参加することでしょう」

「もしかして、欠席したら怒られるって思われてる……?」


 まるで上司に誘われた飲み会みたく強制参加させてしまっていた……?

 いや、それとも誰も参加しなかったら僕達が悲しむからって、慈悲で参加してくれたのかな?


「その可能性がないわけではないですが……」

「そ、そうだよね……あ、あはは……」


 『慈愛の大聖女』が慈悲を受けているようじゃ、世話ないな……。


「話は最後までお聞きください。スポンサーの皆様は皆お抱えの魔法使いや護衛を雇う豪商や騎士団を作るような貴族の方々。その方々にとって、聖女様のご動向は超重要な情報になり得るのです。例えば今ここでソラ様やリン様の好物が漏れたりすれば、世界中でそれが流行ったりするのです」

「それはちょっと、ミーハーすぎなんじゃ……」

「そういうものですよ。私だって、ぬいぐるみを抱いて笑顔になっていらっしゃるソラ様のお姿を見たことでぬいぐるみを好きになったところはございますからね」

「エ、エルーちゃん……」


 ありのままの僕を受け入れてくれるエルーちゃんの方こそ慈愛の大聖女を名乗っていいと思う。

 任命制なら間違いなくエルーちゃんに渡している。

 だって慈愛も聖女もお似合いだし、慈愛の聖女である僕を慈愛で支えてくれているのはエルーちゃんだから。


「あの、エルーシア様……?作戦会議をするので、いちゃついてないでこちらに来てください」

「す、すみませんっ!」


 セフィーに怒られてしまった。




<これより、大聖女奏天様と聖女リン様御一行によるデモンストレーションを執り行います>

「準備はいい?」


 武術大会や魔術大会とは違い、使える装備はお互いにすべて使うルールだ。

 だから『魔蓄の指環』でお互いに魔力量は一万くらいあることを想定しておいた方がいいだろう。

 これは、いかに均衡を破るかが鍵になってくる。


「「はい!」」

「シルヴィ、眷属憑依――『先手は譲ってやる』」


 シルヴィの白い翼と黄色に光る天使の輪が生え、僕の髪が綺麗な金髪になって身長が伸びていく。


「あれは、大天使様か……!?」

「大聖女様が、大天使様になられたのか?」

「いや、一体化したように感じたが……」


「いきます」


 エルーちゃんの合図と共に、ソーニャさんと神流ちゃんが二人がかりで接近して近接攻撃をしてきた。

 シルヴィとステータスを合わせた物理障壁ならば余裕をもって弾き返すことができるが、二人とも当たり前のように属性付与を行ってくるのでそのままだと物理障壁は突破されてしまう。

 よって外側に魔法障壁、中側に物理障壁を張ることで両方弾き返すことはできる。

 一回の攻撃に障壁を2つ張るため、2つの指がその対処に縛られる。

 二人とも両手剣なので、手数としてはこれで僕の10本の指のうち、8本が縛られる。

 そこにセフィーから隙間を縫うように火魔法のバーニングカーブショットが二本飛んでくる。

 それをリフレクトバリアで弾いてしまうと、すべての指が縛られる。

 曲線的に来る炎の光線は上級魔法だけあって、リフレクトバリアで弾き返しても直線にしか跳ね返らないので、セフィーにダメージを返すことはできない。

 流石エルーちゃんの指揮系統、よく考えられている。


「すげぇ。三人で、なんて手数だ……」

「だがそれを無傷で切り抜けているソラ様も凄くないか?」

「だが、これで大聖女様の指は塞がれた。まだリン様ともう一人が控えてるのだし、大聖女様が不利だと思うが……」


 まぁ普通はそう思うよね。

 でも五対一をする以上、僕だってそれは想定していた事だ。


「今です、リン様!」

『――燦々たる宇宙の秩序よ、今ひと度吾に力を貸し与えたまえ――』

「『――煌めく白銀の星空よ、今我承りし祝福が悪逆非道を妨げる大楯となれ――』」

「!?」

「手が塞がれているのに、どこから魔法陣を……!?」

『――星の放(スターライト・)射光線(ラジエーション)――』

「『――星の大盾(ルミナ・アイギス)!――』」


 星形の横向きの巨大螺旋光線が飛んでくるのを、巨大な星の盾で防ぐ。

 これ、防がないとソーニャさん達も巻き添えなんだけど……。


「おいおい、嘘だろ……!?」

「ま、まさか……翼の羽根で魔法陣を展開したというのですか……!?」


 魔法陣は、翼から出ている。


 これを編み出すのにはなかなかに時間がかかったが、でも苦労した甲斐はある。

 シルヴィの神体で作られた羽根の一本一本が、僕の魔法の手数ということになる。


「『私の魔法の手数は……数千だ!』」

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